第43話 王国のあり方

「それは、わしが手にいれた武器ではないか! なぜ、お前らが持っている!」


「なぜと言われても、これは元々俺達の武器だけどな……」


「貴様、わしに口答えをするのか? わしが誰だか分かっているのか?」


 いつの間にか、カイル達の武器は取られたというだけでなく、マネースキー王の物になったという認識のようだ。


「仲間が失礼なことを言ってしまったのであれば、申し訳ありません。しかし、僕達にとってその武器は、大切な物なのです。」


「そんなことは、どうでもよい。早くこちらに渡せ!」


 やはり、分かってもらうことは出来なかった。

 こちらの気持ちを理解してもらうのは、難しいようだ。


「それは、出来ません!」


「では、仕方がないな。お前たち、捕まえるのだ!」


 カイルは、きっぱりと断った。

 だが、マネースキーは納得することができなかったのか、近くの護衛にカイル達を捕まえることを命じた。


「俺が護衛を引き寄せる。その間に、なんとかしてくれ!」



 タイロンは、闘技場でのもやもやとした気持ちを晴らすかのように、斧を振り回す。

 護衛は、マネースキー王の状況を把握しながら避けることで、精一杯の様子だ。


「僕達をまた捕まえることになれば、異変を感じる人が出てくるのではないですか?」


「このリッチ王国から、外に出さないから大丈夫だ。城下町にいたとしても、捕まえれば終わりだ。」


 カイルの考えなど想定済みといった所であった。

 やはり、強硬な姿勢を貫いている。


「マネースキー様、私からもお願いできませんか。そのような、態度をとられて良いのでしょうか?」


「誰だお前は。わしに指図をするでない!」


「私は、アルメスク王国に関わりがあります。ミーナと申します。」


「何だと? ミーナといえば、アルメスクの王女ではないか。」


 マネースキーは、声を荒げる。

 そして、ミーナの素性を知ると少し冷静になった。


「私達の言葉に耳を傾けていただけないのであれば、仕方がありませんね。では、王国審査会に判断を委ねましょう。政府がリッチ王国について話し合いの機会を持つこととなるでしょう。」


 王国審査会というのは、聞き慣れない言葉だ。

 ミーナは王女という立場から、王国のあり方について詳しいようだ。


「待ってくれ。話せば、分かる。」


 突然、焦りだした。

 マネースキーの反応から、大きな話であることが予測される。


「私は、このリッチ王国を訪れてから、ずっと違和感を感じていました。王国というのは理想を掲げながらも、現実に出来ることを求めていくというのが、本来のあるべき姿だと思います。しかし、この王国には理想そのものが現実であるかのように、捉えてしまってしまっています。」


「どういうことだ。それの何がいけないというのだ!」


「マネースキー王が、リッチ王国を私物化してしまったことに繋がります。王国は人々の物です。あなたの物ではありません。この王国が表面上で成り立っているように見えるのは、見えない部分での犠牲が多く払われているからです。恐怖という鎖で縛りつけてはなりません!」


 マネースキー王の問題点に気付く。

 そして、ミーナの王国に対しての思いが伝えられた。


「このリッチ王国で、わしが一番偉い。わしの行うこと全てが正しい!」


 立ち上がって、高らかに宣言する。

 この自信はどこから生まれるのだろうか。


「この状況を分かりますか? 僕は、本気ですよ。」


 カイルは剣を向けた。

 少しずつ、マネースキー王の元に歩みを進める。


「マネースキー様、逃げてください! こいつ意外と……つよ……いです。」


 タイロンが護衛達の力を上回った。

 護衛の者は、床に横たわっている。

 闘技場の時とは違って、武器となる斧を持っているのが大きかったようだ。


 その後、このままではまずいと思ったのか、逃げようとするマネースキー王。

 だが、一瞬の隙をついてカイルも斬りかかった。


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