第41話 共通の敵

「まずは、この場所からどうやって逃げるかですよね。」


 ミーナが困った様子で話す。


「それなんだけど、他の牢屋の人達を解放するというのはどうかな?」


 カイルは、逃げ出す為の作戦を思いついたようだ。

 皆に提案をする。


「どういうことだ?」


タイロンは、カイルに詳しい説明を求める。

ユイは不思議そうに見ている。


「僕達みたいに兵士と対決をして負けてしまった人達が、この牢獄に居るんだよね。ということは、リッチ王国に対して不満を抱いている人達もいるんじゃないかな?」


「なるほどね。牢屋の鍵も持っているわ!」


 カイルの作戦について、ユイが反応をする。

 捕まった人達が不満を抱いているというのが、自分の環境と重なったのだろうか。


「その方たちにも、手伝ってもらうのですね。」


「それは、良い考えだな。」


 ミーナとタイロンも前向きだ。


「その後は、何をするのか決まっているのかしら?」


 ユイがその後の流れを聞く。


「俺とカイルは武器を取られてしまっている。だから、城に行って取り返したいんだが……」


「そうですね。私は武器を取られてはいませんが、2人の気持ちを考えるとマネースキー王の所へ伺うのが良いと思います!」


「僕達の武器は、リッチ城のどこにあるのでしょうか?」


「私は、武器庫にあると思います。城によって場所は異なるかもしれませんが、探してみましょうか?」


「やっぱり、あなた達は面白いわ。普通は逃げ出すことが出来れば、少しでも遠くに行こうとするはずよ。でも、あなた達からは諦めない姿勢が感じられるわ!」


「それは、ユイさんも同じですよね!」


 お返しとばかりに、ミーナが意地悪に話す。

 ユイも、照れくさい表情を見せながら笑う。

 仲が良い様子の2人であった。


「解放しに行きましょう!」


 カイルの言葉で牢屋を出る。

 そして、隣の牢屋まで歩く。

 捕まっている人の話を聞いてみる。


「どうして、捕まっているのですか?」


「兵士との対決に負けてしまったからですよ。」


「僕達と一緒にここから出ませんか? 今から、城に行こうと思っているんです。」


「行った所で、何も変わりませんよ。今度は捕まるだけでは済まないかもしれません……」


 気持ちも沈んでしまっている。

 兵士との対決に負けてしまったからだろうか。

 すると、タイロンが前に出てきた。


「俺も兵と戦った。理不尽なことばかりで、結果負けてしまったがな……だが、今はその理不尽さの中でも戦うことを選んだ。いつ牢屋を出れるかも分からない中で、そのままで良いのか!」


「良いわけないでしょう! ……あなた方と行けば、ここを逃げれるのですか?」


 珍しく、タイロンが熱くなった。

 捕まった人達も本心を覗かせる。


「あぁ、だがそれにはお前たちの力が必要だ。」


「……分かりました。協力しましょう。」


 他の捕まっている人達同士でも話し合った結果、手伝ってくれることに決まった。


「ちょっと待っててね。今から開けるから。」


 ユイが持っていた鍵で開ける。

 牢屋の中から何人か出てきた。

 お礼を伝えると、城へと向かっていった。


「まだ、捕まっている人達が居るわ、急ぎましょう。」


 兵士が異変に気付くかもしれなかった為、急ぐ必要があった。

 先程と同じ要領で、他の牢屋の人達も助けていく。

 多くの人達を助けると、牢獄を出る。

 見張りの兵士が居たはずだが、数に圧倒されたようだ。


 リッチ王国、そしてマネースキー王という共通の敵に対して、団結した。

 先に逃げ出した人達に続いて、カイル達も城へと向かった。

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