第40話 診察

「カイルとタイロンがいるかもしれない場所に行ってみる?」


「2人がどこにいるのか、分かるのですか?」


 ミーナが尋ねる。

 ユイも知らないと思うが、予想することがなぜ出来たのだろうか。


「確証は持てないけれど、牢獄でも治療を受けている人もいるから、恐らくそこに捕まっているのではないかしら。別の所に連れていかれていれば、分からないけど……」


「お願いします。案内してください。」


 ミーナは考えに賛同した。

 ユイが先導して、牢獄を目指す。

 闘技場から逃げてきた時のように、顔をなるべく隠しながら歩く。


「実はね、闘技場で戦った人達をすぐに収容することが出来るように、牢獄は近くに建てられているのよ。」


「それでしたら、遠くの場所まで走らなくて正解でしたね。ユイさんともこうして知り合えたわけですし!」


「安心するのは、まだ早いわよ。2人が捕まっているかも、まだ分かっていないのだから。」


 ユイは落ち着いている。

 様々な可能性を考えているようだ。

 ミーナもユイの態度や言葉から気を引き締める。


「着いたわよ。」


 ユイとミーナは知らないが、カイル達を牢屋まで連れていった見張りの兵士がいた。

 ミーナは、ユイの助手を演じるように指示を出す。


「ご苦労様です!」

「お前は、ホープ村から治療の手伝いをしに来ている者だな。」


 兵士は、ユイのことを認識しているようだ。

 ただ、そんなユイに対しても厳しい態度をとっている。


「そっちのお前は誰だ?」

「私の手伝いをしてくれている助手です。」

「何をしに来た?」


 ひとまず、怪しまれてはいないようだ。

 質問に答える。


「本日、こちらに収容された者がいると聞いたのですが?」


 やんわりと聞いてみる。

 そして、状況を把握しようとした。


「あぁ、先程2人やって来たな。それが、どうした?」


「もしよろしければ、私にその方たちの診察をさせてもらえませんか?」


「なぜだ? 明日以降でも良いだろう!」


「明日から早速、作業に参加させるためですよ。少しでも早く診察した方が、活動をさせるのに良いかと思いまして……」


 自分達からの要望というよりも、兵士達の立場で考えた時に都合が良い提案をする。

 最初は乗り気ではなかったが、少しでも早く参加できるというのが気になったようだ。


「今から診察してやれ。何か問題があれば、すぐに報告しろ!」


「分かりました。」


 兵士は意見を変えて、ユイの提案を受け入れた。

 表面だけだが、ユイが少なからず信頼されていることが分かった。


「牢屋の鍵はこれを使え。」


 金属製の輪に何個も付いているタイプのものだった。

 見張りの兵士の指示で牢獄に入っていく。


「なんとか、中に入ることが出来たわね。」


「カイル達は、どこに居るのでしょう?」


 兵士に気付かれてはいけない為、小声で話す。

 確認しながら、奥に進んでいく。


「どうやら、奥の牢屋みたいですね。」


「そのようね。」


 カイルとタイロンを見つけた。

 大声を出されては困るため、ミーナが合図をする。

 2人にも伝わったようだ。


「カイル、タイロン……私です、ミーナです。助けに来ました。」


「心配をかけてしまって、悪かったな。」


「ミーナも無事で良かったよ……助けに来てくれてありがとう!」


 ユイが居ることにも、触れる。


「久しぶりね。また会えて嬉しいわ。」


「ユイさん! お久しぶりです。」


 何度か試してみて、カイル達の牢屋の鍵を探す。

 開けることに成功すると、牢屋の中で話をする。

 バレないようにするため、診察をしているかのように装う。



「どうしてミーナと一緒に居るんですか?」


「偶然会ってね。話を聞いてみたら、2人が捕まったかもしれないというから、助けになれればと思ったのよ。」


「ありがとうございます! まだ、ユイさんと話したいこともあるけれど、今はこれからの行動について話し合いましょう。」


 皆は、カイルの意見に賛成した。

 逃げ出す方法や、その後について話す。

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