第39話 手を貸す
「先程の村長さんの話で、ユイさんのことも話されていたので……それに、仲間もユイさんのことを知っていたみたいなのです。」
「仲間ということは、旅でもしているの?」
「そうです。カイルとタイロンという方々と旅をしています。2人は、ユイさんとイカチ村の近くで出会ったと話していました。」
「その2人なら、覚えているわ。薬草を手に入れる為に、歩いていた途中で出会ったの。その薬草がもう無いことを教えてくれて助かったわ。でも、2人の姿が見当たらないけれど何かあったのかしら?」
ミーナは考えた。
これまでに起きたことを正直に話すべきか、何も知らないユイを巻き込まないようにする為に、嘘をつくべきか。
「恐らく兵士に捕まってしまったと思います。」
「どうして、そのようなことに?」
ユイは驚いた様子だ。
ミーナに理由を尋ねる。
「私達がリッチ王国に入る為には、戦いに勝つことを条件とされました。しかし、いざ戦ってみると相手の兵士は攻撃が出来る武器や、身を守る為の防具をつけていたのです。」
「あなた方は、武器は使わなかったの?」
ユイは当然の疑問を投げかける。
「もちろん用意してありました。しかし、危ないからという理由と平等ではないということで使えなかったのです。」
「それは、納得できないわね。」
「私達の提案は、ほとんど受け入れてもらうことが出来ませんでした。ただ、それがこの王国のルールであるのならと考えたのです。」
ユイもミーナの話を聞いて、次第に不信感を抱き始めている。
「それで、逃げてきたのね?」
「仲間のカイルが異変に気付きまして、負けた時に何をされるか分からないからと、私だけでも逃げるようにと伝えてきたのです。」
ここまでの状況を伝えた。
「私が入る時には言われなかったけれど、何か基準や理由でもあるのかな?」
「それは、ユイさんが人の助けになる医者だからです。元から住んでいた方々や、武器や道具など必要なものを提供することが出来る方々しか、入ってはならないみたいです。」
ユイも大体のことは、理解できたようだ。
「これから、どうするつもりなの?」
「これまでは、兵士に見つからないようにすることが大事でした。けれども、ずっとこのままの状態で良いというわけにはいきません。2人を助けに行こうと思います。」
「危険すぎるわ。止めておいた方が良い!」
ユイの考えも分かる。
あからさまに危ない場所に向かわせるわけにはいかない。
「では、私はどうしたら良いのでしょうか? 放っておくことは出来ません。」
「味方は、一人でも多い方が良いでしょ? カイル達の役にも立ちたいから、私も一緒に行くわ!」
まさかの一言に、ミーナは驚いた。
そして、嬉しい気持ちになった。
「私達に手を貸して良いのですか? ユイさんの立場も悪くなるかもしれませんよ。」
「ホープ村の村長にも聞いたかもしれないけれど、治療の手伝いをするのは、王国との関係を考えた時に断ることが出来ないからなの。でも、今が変わる良い機会だと思うの!」
「ありがとうございます!」
ミーナは手を貸してくれたユイにお礼を言う。
リッチ王国との状況を変えたいという気持ちが伝わってきた。
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