第33話 短い距離

「そうだったんですね。ユイさんとまた会う機会があれば良いなと思ったんですけど……」



「ホープ村では難しいかもしれませんが、王国で会えるかもしれませんね。」



「はい、そうなれば嬉しいですね! あの……王国には、医者は居ないのですか?」



「居ます。人の数も足りていると思います。ただ、医師として最低限の知識や技術しか持っていないのです……ですので、怪我や病気の症状によっては私どもの力が必要とされているのです。」



「でも、それでは気持ちが複雑なのではありませんか。王国の関係者が、あれほど酷い態度をとったのですよ?」



「確かに、気持ちとしては複雑ですね。私どもが診察した結果を王国の医師が、自分の意見のように話していた様子も見受けられました。それでも、私どもは医者です……患者さんの役に立ちたい、元気になっていただきたいというのが一番なのです。」



 村長の医者としての思いを知ったカイル達。


 すると今度は、村長から話をする。



「皆さんも王国に行かれるのでしたら、気をつけて下さいね。」


「それは、どういった意味でしょうか?」


「関わりがある私どもに対して、あのような態度をとる方たちです。初めて会う皆さんに、どのような態度をとるのか不安なんです……」


「心配してくださって、ありがとうございます。十分に警戒しますから安心してください!」



 心配してくれた村長に対して、言葉をかける。



「そろそろ、行くか?」


「そうですね。長い時間お邪魔してしまっては、ご迷惑になりますしね。」


「村長さん、これから王国に行こうと思います。」


「それは、残念ですね。私どもとしては、まだ村に居ていただいても構わないのですが……仕方ありませんね。」



 村長に挨拶をすると、家を出る。


 すると、先ほど話をした女性がやって来た。



「あなた達、さっきは逃げるようにして帰ってしまって、悪かったわね。話し込むと、私が大事なことまで全部話してしまいそうだったから……村長と会えたようで良かったわ。」



「ありがとうございます。ホープ村のことも聞きました。それで、僕達はこれから王国に行ってみようと思います。」



「そうなの? 私はあなた達を止めないけれど、危ないわよ。行くなら、気を付けなさいね。」



 やはり、ホープ村の人達は王国に対して、危険だという認識を持っているようだ。


 女性にお礼を言うと、村を後にする。


 村を出ると、ホープ村に来るまでに見えた大きな建物を目指す。


 とはいったものの、あっという間につく距離であった。

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