第29話 心配

 ダグラスが、カイル達の状況を伝えると、今度はイカチ村の村長が話をする。



「なぁダグラス……あのことは、カイルには伝えたのか?」



「いや、まだじゃ。剣を返して、王国から戻ってきたときにでも、伝えようと思っておったからの……」



「そうじゃったか、もう少し先になるかもしれんな……」



 意味深な会話をする2人。


 ダグラスが、手紙の続きを話す。



「実はな、カイル達の旅には、ミーナ王女も一緒らしいんじゃ」



「何、それは本当か? だとしたら、心配だ。王女に、もしものことがあったら……」



「あぁ、ほとんど戦闘の経験がないだろうからな。バトラ王は、何を考えておるのだ!」



「とにかく、無事に戻ってきてくれればいいが……」



 カイル達の心配をしながら、2人は話を続ける。




 場所は変わって、アルメスク城。 


 ミーナが旅立った後、バトラは元気が無いようだ。 


 ただ、体調が悪いというわけではない。


 寂しさのようなものだ。



「バトラ王よ、そこまでお辛いのであれば、ミーナ王女を旅に出さない方が良かったのではありませんか?」



「そうかもしれんな……だが、ミーナは物ではないからな。私だけの気持ちだけで決めてはならん。それに、ミーナが旅に出たいことを随分と前から、私は知っていたからな……その思いに少しでも、応えてやりたいと思っていた。」



「ですが、心配ではないのですか?」



「もちろん心配だ。だが、カイルにタイロンという頼もしい仲間がいる。様々な場所で、経験を積むということが結果として、ミーナの為にもなると思うのだ。」



 バトラ王は大臣に伝える。


 しばらくすると、兵が入ってきた。



「お伝えしたいことがあります。」


「何事だ?」


「取り調べを行っております、男についてです。」


「何か、分かったのか?」


「いえ、まだ詳しいことは分かっておりません……しかし、狙いはアルメスクだけではないようです。」



「どういう事だ?」


「混乱を招けるのであれば、どこの場所であろうと構わなかったと話しています。」



 バトラ王は、考え込む。


 混乱という言葉が気になったようだ。



「ご苦労であった。引き続き、取り調べて何か分かれば報告するのだ!」


「はい! 失礼します。」



 報告を終えると、兵は離れていった。



「バトラ王よ。これから、どうなさるのですか?」



「今は、目的がはっきりとしていない。そんな中、探るのは危険だ。アルメスクを守るために警備を強めることが優先だ!」



 バトラ王の指示のもと、警備体制が変わった。


 そして、強固なものになった。

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