第4話 イカチ村
怪しげな男が盗んだ国宝品の剣を、王国に返しに行くことになったカイルは、ひとまず歩いて近くの村に向かっていた。
「僕の足なら歩いてすぐに着くからと、ダグラスは言っていたけど、そんな近くに村があるなんて知らなかったな……」
一時間ほど歩くと村が見えてきた。
すぐに到着ができたといえるかは分からないが、村のすぐ近くには森のように、多くの木々が立っていた。
カイルが暮らしている村と比べて、大きさはさほど変わらない。
入り口に行くと、村人がカイルを見つけて話しかけてきた。
「見かけない顔ですね。村に何かご用ですか?」
「あの、この村の村長さんに手紙を渡したいのですが……」
「そういうことでしたら、村の奥まで進むと村長の家がありますよ。」
「ありがとうございます。今から行ってみます。」
カイルは村人にお礼を告げると、村の奥まで歩きはじめた。
少し歩くと村の中でも大きな家にたどり着いた。ノックをして待ってみると、建物の中から一人の老人が現れた。
「どうなさった、若い人? わしに何か用でも?」
「あの、この村の村長さんに手紙を届けに来たのですが……」
「村長はわしじゃ。手紙とは珍しい…… まぁ続きは中で話そう。さぁ、家に入りなされ。」
カイルは村長に連れられて、家に入っていった。村長は自分の座る席が決まっているのか、すぐに腰を下ろすと、カイルに手招きをしながら合図を送る。
そして、カイルは鞄から手紙を取り出して渡した。
「こちらが先ほど話した、村長さん宛ての手紙になります。」
「ありがとう。差出人は……ダグラスか!
ということは、お前がカイルなのか?」
「はい、僕のことをご存知なのですか?」
「あぁ、昨日もダグラスとお前さんの話をしておったからな。わしとダグラスは、古くからの知り合いなんじゃ。」
「そうだったのですね。」
「しかし、昨日も会っておるのに手紙を送ってくるとは何かあったのじゃろうか? 手紙を読ませてもらうから、少し待ってなさい。」
「分かりました。」
村長はしばらくの間、ダグラスからの手紙に目を通した。そして、手紙を読み終えると手紙を封筒に戻しながら、カイルに話しかけた。
「そんなことがあったのか。大変じゃったの……」
「それで、手紙には何と書いてあったのですか?」
「カイルが、次の目的地に向かうまでの間、世話をしてやってほしいと書いてあった。他にも書いてあったが、お前さん……愛されておるの……」
「はい、ダグラスには感謝の気持ちでいっぱいです。」
「この村の名前は、イカチ村といってな。お前さんの居た村と雰囲気も似とるし、すぐに慣れるじゃろ。少しの間、ゆっくりしていくといい……」
「ありがとうございます。村の人達とも話してみようと思います。」
村長とのやり取りを終えて、家の外へ出る。
すると、多くの木々が見える方角から煙が上がっているのが見えた。不思議に思ったカイルは、村長に尋ねた。
「煙が上がっているのが見えたのですが、何かあったのですか?」
「あれは、この村の者が作業をしておるのじゃ。」
「作業ですか?」
「もしも気になるのであれば、行ってみると良い。」
「わかりました。今から行ってみようと思います。」
村長との話が終わると、作業の様子を見る為に向かってみることにした。
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