その後の
里崎の観察と思考
「集まりすぎている」
里崎は一人呟く。眉間に皺を寄せ、アドバンテージについて考えを巡らせていた。
人にはそれぞれ長所なるものがある。足が速い人もいれば、歌唱力に長ける者もいる。動体視力が良い人もいるだろう。しかし、長所という言葉だけでは言い表せないほど、突出した能力を持つ人々がいた。彼らがもつその能力はアドバンテージ、知る人の間ではアドと呼ばれていた。
里崎は観察力のアドの持ち主だった。彼の観察力にかかれば、アド持ちとそうでない人との区別は、ある程度の時間があれば看破できた。さらに、アド持ちではないにしろ、彼には考察する力があった。
「今この街にアド持ちは何人だ…?俺が確認できているだけでも…、8,9人はいる」
彼は頭を掻き、ため息をつきながら煙草に火をつけた。ゆらゆらと立ちぼる紫煙をぼうっと目で追う。頭の中で思考が巡る。
アドバンテージという能力は、大抵の人は持っていない。だからこそ、持っている人がそれを自覚し、有効に活用できれば人生を有利に働かせることが出来る。
ただ、そこに悪意が混ざれば問題が発生する。
アド持ちはレアな存在だ。自分の人生を良くするために使う分には問題ない。しかし、それを利用しようとする奴らが当然居る。需要が存在してしまう。
「寄ってくるよなあ、多分。でも相手が明確でなければ、対応の仕様がなあ…」
里崎は目を瞑り、がっくりとうなだれた。手に持った煙草が短くなり、彼は慌てて灰皿に押し付けて火を消した。
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