ep2 リカオン

「いやー探検隊凄かったねぇ~」

「まさか本当に巨大セルリアンを倒してしまうなんて…」

ヒグマとアイアイが話していた。彼らを含む警備隊は巨大セルリアン騒動のあともパークでのセルリアン討伐を続けている。特に巨大セルリアンが通過した場所はセルリウムが残っている可能性があるので念入りに確認をするようカコ博士からもお願いされている。

「探検隊の連携、凄かったですね…。私もあんな風になりたいです」

森の中を歩きながらリカオンが言った。彼女もまた、ドールと同じようにチームを大切にする性格だ。

「どうだろうね~。難しいと思うよ~」

ヒグマがいたずらっぽく言った。

「そんなぁ…」

「まあまあ、リカオンさんにもきっと立派な連携ができるようになりますよ」

キンシコウがリカオンを励ました。

「さあ、パトロールを続けなくちゃ」

ヒグマがそう言うと、先に歩き始めた。リカオンたちもあとに続く。そのとき、

ガサガサッ

草むらの中を何かが動く音がした。

「聞こえた?」

「聞こえ…ました…」

「ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

草むらの中からセルリアンが現れた。見た限りかなりの数がいる。

「パークと探検隊のためにも、倒さないとね!」

ヒグマがそう叫ぶと同時に、持っていた熊手で攻撃を始めた。三人も続けて攻撃を始める。

「何体いる!?」

「10、いや、15体くらいはいます!」

「それくらいならなんとかなるねっ!」

そう言うと4人はセルリアンに対して猛攻を始めた。


「たぁーーーーーーっ!!!」

リカオンが最後の1体を倒した。

「これで最後かな?」

「そのようですね」

辺りの安全を確認して、4人はようやく安堵した。

「セルリアン、相変わらず多いですね…」

「警備隊も探検隊もパトロールを強化してるけど、一向に減らないね」

キンシコウとヒグマが近くの岩場に腰掛けながら言った。

「ジャパリパーク、本当にグランドオープンできるのでしょうか…」

アイアイが呟いた。思わず全員が黙り込んでしまった。少しの沈黙の後、リカオンが立ち上がって言った。

「きっと…、きっと探検隊のみなさんなら叶えられると思います」

「そのためにも私たち警備隊も協力できることをしていきましょう!」

リカオンがそう言うとみんなが頷き始めた。

「そうだね、まずは私たちができることをやっていかないとね!」

「リカオンさんの言う通りですね」

「さあ、パトロールの続きを始めましょうか」

「はい!」

4人は出発の準備を始めた。そのときだった。地鳴りのような音が響いた。

「何の音!?」

「あれ見てください!」

キンシコウが指さした方向にはセルリアンが大勢いた。しかもそのうちの1体はかなり大きいサイズのようだ。

「こっちに向かってきてます!」

「ここじゃ戦えないです!一旦森から出ましょう!」

4人は森を抜けた。セルリアンたちも彼らを追って森から出てきた。

「これは厄介なのが出てきたね…」

ヒグマが呟いた。

「まずは周りの雑魚を倒してしまいましょう!」

リカオンがそう叫ぶと、4人は一斉に雑魚セルリアンに襲い掛かった。


「とりゃーー!!」

ヒグマが最後の雑魚セルリアンを倒し、残すは大型の1体のみになった。

ブルドーザーのような形をしたセルリアンは、本来ブルドーザーにはないはずの腕のような部位を振り回している。あれに当たったらただでは済まない。

「これじゃ近づけない…」

「何か弱点は…」

「皆さん!あの上の部分見てください!」

アイアイが指した部分には、なにやらキラキラしたものが見え隠れしている。

「あれってもしかして…」

「セルリアンの急所じゃないですか!?」

リカオンは前に聞いたことを思い出した。一部のセルリアンには急所があり、その部分を攻撃するとセルリアンを一撃で倒すことができる。しかし、

「あの高さじゃ届かないよ!」

今回のセルリアンはその大きさ故に、急所が高い場所にあり、今の4人では届きそうにない場所になっている。

「せめて鳥のフレンズさんが居れば…」

リカオンは周りを見渡したが、他のフレンズはいないようだ。自分たち4人でなんとかするしかないということだ。

「高いところから攻撃ができれば…、あっ!」

やや離れたところに渓谷を見つけた。谷の部分にセルリアンを誘い込めれば、上から叩けるかもしれない。

「皆さん!あっちの渓谷の上に行ってください!」

「私が下までこのセルリアンを誘い込みます!合図があったら上から攻撃をお願いします!」

「待ち伏せってことだね。わかった!」

「頼みましたよ。リカオンさん!」

そう言うと3人は先回りをするために一度セルリアンから離れた。

「さあ、あなたの相手は私ですよ!」

攻撃をかわしながら、リカオンは少しずつ渓谷までセルリアンを誘導した。

「もう少し、もう少し…」

攻撃をかわしてはおびき寄せ、かわしてはおびき寄せる。それを繰り返すため体力と気力を使う作戦だが、リカオンは非常にタフだった。彼女は確実にセルリアンを誘導した。


「来た…!」

ヒグマたちは渓谷の上で息を潜めていた。セルリアンとそれを誘導するリカオンが見えた。

「合図があったらすぐに飛び出すよ」

「はい!」

「了解です」

セルリアンの近づく音がだんだんと大きくなってきた。

そして、リカオンからの合図が聞こえた。

「はっくしょん!!!」

「今だ!!」

リカオンのくしゃみを聞いて3人は一斉に渓谷の上から飛び出し、セルリアンに襲い掛かった。そう、リカオンの合図とはくしゃみだったのだ。

3人はセルリアンを上から攻撃し、急所を確実に仕留めた。急所を攻撃されたセルリアンは態勢を崩し、ぱっかーんとサンドスターの結晶となってしまった。つまりセルリアンを無事に倒したということだ。

「やった…成功した…」

ここまで誘導してきたリカオンは、思わず大きな息を吐いた。

「ふーー、ようやく倒せたね」

「リカオンさんの的確な作戦がうまく決まりましたね!」

キンシコウがそう言った。

「そ、そうですか…?えへへ…」

リカオンの頬がつい緩む。

「お前たち。よくやったのです」

突然上から声がした。アフリカオオコノハズクのコノハ博士とワシミミズクのミミちゃん助手だ。

「なんだー、博士たちがいたなら手伝ってくれればよかったのにー」

ヒグマがぼやいた。

「我々はお前たちをテストしていたのです」

「お前たちが巨大セルリアンのあとも油断してないかのテストです」

「まあお前たちは油断していないことがわかったので今日はもう十分なのです」

「十分なのです」

ミミちゃん助手が続けた。

「この渓谷をまっすぐ進むとオアシスがあったのです。そこで一度休憩すると良いのです」

「では我々はこれで」

「我々は忙しいので」

2人は飛び上がった。

「そうそう、リカオン」

「はい?」

空中に浮きながら、コノハ博士が言った。

「お前の作戦、なかなか良い連携だったのです」

そう言い残すと、2人はあっという間に飛んで行ってしまった。

「珍しいですね。あの2人が誰かを褒めるなんて」

「確かにそうですね」

「それくらい良くやったってことだよ。ねーリカオン」

リカオンは3人の方を向いて笑った。

「はい!これからももっと連携できるように頑張ります!」




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