第5話 終わり良ければ総て良し
「ふん♪ふふん♪ふふん♪ふふん♪ふんふふふん♪ふふふんふん~♪」
チルリルは機嫌よく鼻歌を歌っている。
手元には紙とペン。教会の一室で書き連ねているのは当然の如く、自分のサインである。
「ヒスメナさんったら心配ご無用なのだわ。公的な文書には絶対に書かないのだわ。個人で楽しむだけに留めるチルリルは常識的なのだわ。」
すらすらと文字を連ねていく。あの時、画面で見た映像が忘れられない。
(ΨチルリルΨ 卍チルリル卍 §チルリル§ †チルリル†)
「やっぱり剣持つ救世主のチルリルにはこれがぴったしカンカンなのだわ・・。」
(†チルリル† †チルリル† †チルリル† †チルリル† †チルリル†)
「良い!最の高なのだわ!他に†チルリル†を超えて似合う名前なんてないのだわ!ああ、ゾクゾクするのだわ!」
その時、部屋に大慌てでプライが飛び込んできた。
「チルリル殿!ここでしたか!」
悦に浸っていたところに邪魔が入り、チルリルはギロリとプライを睨みつける。
「もう!いいところだったのに邪魔しないで欲しいのだわ!プライ、やかましいのだわ!」
「す、すみません、チルリル殿。だがしかし至急の用件でございましてな。」
滝のように汗を流しているプライ。熱い男だからなのか冷や汗なのかは不明である。
「ロゼッタ殿がお呼びでございますぞ!」
チルリルは嫌な予感がした。
「ろ、ロゼッタが一体全体何の用なのだわ?!」
「それがですな、此度アルド殿とお出ましなされた東方にて、異端の疑いありだそうで・・・。すぐさま審問室へ向かわれますよう言付かっておりまして。チルリル殿、お心当たりは?」
「ぎくぅ!そ、そんなのあるわけないのだわ!」
「でしたら身の潔白を晴らしてきて下さい。ロゼッタ殿が急かしておりますのでなるたけ早急に。」
「はああああー。なんでこうなるのだわ。そもそもどうしてそんなガセネタをロゼッタが信用するのだわ?」
「あ、いや、なにやら鬼竜殿と直接お話しされる機会があったそうで。そこで東方のどこへ行かれたかロゼッタ殿が知ることとなったようでして。」
チルリルの顔が一瞬で青ざめた。
(大丈夫なのだわ。神社には行っただけなのだわ。結局お参りまでしなかったのだわ。無実なのだわ。)
そう自分に言い聞かせて深呼吸する。
「・・・承知したのだわ。プライ、審問室へ付いてくるのだわ。全力で走るのだわ。」
「はっ、盾役ならお任せを。」
風のように部屋を走り抜け、ロゼッタのところへ急ぐ二人。
その時ひらりと浮かぶ一枚の紙。部屋の窓から外へと風に乗り、行きかう人々の間を抜け、ふわりと地面へ舞い落ちた。
すんすん・・・
嗅ぎなれたにおいに釣られたのかひょっこり現れたモケがその紙を見つけ近寄る。
すんすん・・・
確かめるようににおいを嗅ぐ。
すんすん・・・もしゃもしゃもしゃ。
あっという間に口の中へ。
こうして文字の歴史改変は、モケによって守られた。
~Quest Complete~
チルリル、文武両道。 ねこのふでばこ @nekonohude
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