決戦! 異世界の風俗街! 編

第11話 街と言うか、サキュバスの娼館に向かう前に、鬼の姫様は無理ですか? もちろん、無理じゃないです 前編

※ ニコニコ漫画さんでコミック連載中です。   小説版・コミック版共に白石が書いてますが、あっちはコミックとしての面白さを追求した脚本にしているので内容は大きく異なります。






 猫耳族の里に来てから1か月が経過した。

 ご存じの通りに俺は働かずのニート状態だ。

 と、いうか働こうとしたら里のみんなに全力で止められるのだから仕方ない。

 曰く、里を2度も救った上にブラックドラゴンの素材で大金までをもたらした俺だ。

 そんな俺に下働きのようなことをさせるのは、彼女たちの文化からすれば絶対にNGな行為という話らしい。

 なので、仕方がないので俺は毎日食っちゃ寝の生活をしているわけだ。

 より厳密に言うのであれば、目下、俺はエリス&猫耳の娘たちとエロいことしかやってない。

 と、それはさておき。

 族長が言うには、この大森林において猫耳族の里の評判はうなぎのぼりらしい。

 と、いうのもこの前の黒鬼王(オーガキング)の角が魔獣人王さんとやらに高く評価されたらしいんだ。

 おかげさまで族長も鼻が高いということらしいな。

 その関係で、討伐の特別報酬として宝剣まで褒美で貰ったと言うことだ。

「婿殿、どうぞこの宝剣をもらって下され」

 俺のおかげで貰った褒美だから所有権は俺にある。

 そんな理屈で宝剣を貰うことになったんだが、鞘から抜いてみると……なるほど確かに不思議な剣だった。

 一目見ただけでただの剣じゃないというのが良く分かった。なんせ7色に輝いていたんだから。

「なんか虹色に輝いてるな?」

「凄い! これはミスリルの剣ですよっ! 魔獣人王様の褒美としては最上級で末代まで自慢できる代物ですっ!」

 まあ、ミスリルの武器って言ったら、ゲームでは中盤の主力の武器だな。

 ゲーム設定上伝説の勇者一行が中盤に使うくらいだから、この世界では希少なものなんだろう。

「さすがは私の旦那様です! こんなご褒美を貰えるだなんて……っ!」

「お前は『さすが』とか『凄い』とかそんなことばっかり言ってくるよな」

「だってサトルさんは『凄い』し『さすが』なんですもんっ!」

 と、二人でイチャイチャしていると、族長が苦虫を嚙み潰したような表情を作った。

「しかしのう……」

「どうしたんですか?」

「知ってのとおり、猫耳族の里は男手がおらん。魔獣人王に証拠品として預けていたオーガの角も里に返還されたわけじゃし、これを交易で街に流さにゃならんのじゃ」

 まあ、オーガの角なんて里に置いておいても無用の長物だしな。

 人間の街やドワーフの里なんかでは武具の素材として重宝されるらしいが、あいにくと鍛冶の技術はこの里には無い。

「ところが最近人間の街と大森林の中間地点でオーガの異常発生が起きておっての。現在、交易路は完全に死んでおって……塩やらの生活必需品もここしばらく届いておらんのじゃ。買いに行くのも売りに行くのもできんで、まったくもって困ったもんじゃ」

 さて、そういうことなら一肌脱がねばらなるまい。

 俺はほとんどニートみたいなもんだしな。

「里の荷馬車を貸して貰えれば、俺がオーガの角を売って、その金で生活物資を運べるだけ買ってきますよ?」




 昼下がりの森の道。

 馬2頭にひかれた場所で道を行く。

「ふふふ、サトルさんと一緒に里の外に出るのは久しぶりですね!」

「ああ、そうだな」

 お日様の光の下で、エリスのニコニコ笑顔が眩しい。

「街に行ったら一緒にショッピングして美味しいものを食べましょうね!」

「ああ、もちろんだ。でも、里のみんなの生活物資も忘れちゃダメだぞ」

「はい! 了解しました! それと……旦那様?」

「ん? 何だ?」

 ちょっぴりモジモジしていて、エリスの様子がどうにもおかしい。

 そして、彼女は顔を真っ赤にしてこう言ったのだ。

「街でのショッピングの時……手をつないじゃってもいいですか!?」

「ああ、構わんぞ。腕を組んだって一向に構わん」

「やった! ありがとうございます!」

 大はしゃぎという感じで喜ぶエリスに、ふふ……と、俺の頬は思わず緩んでしまう。

 何て言うかエリスって俺と一緒にいるだけで、いっつも楽しそうなんだよな。

 こんな感じで剥き出しの好意でいつも接してくるのも悪い気はしない。

 それどころか、ここ最近はエリスが楽しそうにしてるだけで、俺もなんだか嬉しくなってくる始末だ。

 あと、いまさら手を握るだけで恥じらうような間柄でもないのに、そういうことを恥ずかしそうに言うもんだから……そこがまた可愛い。

「旦那様。そういえば今日は二人で初めての野営ですね」

「町まで一晩はかかるって話だからなー」

「だったら今日は声を控えめにしなくてよさそうですね!」

「いつもは族長に気を使って、声を押し殺してるからな」

 うん、本当にエリスは良い娘だ。

 普通にエロいことを言うし、そういう子は嫌いじゃない。

 と、そんなことを考えながら森の道をひたすら進んでいると、後ろから馬に乗った4人の武装した一団が現れた。

「旦那様! あれは……っ!?」

「あれはどうやら人間でも猫耳族でもなさそうだな」

「……アレは……鬼なのでしょうか?」

 エリスの問いかけに俺は小さく首肯したのだった。



 ☆★☆★☆★



「ならば、今夜は我らと共に野営を張るのが良いだろうな。そうすれば歩哨の負担もできる」

 3人の従者を引き連れた一向のリーダー。

 それは20代後半の鬼人の別嬪さんだった。

 聞けば、この人たちは猫耳族と一緒の森に住んでる隣人さんということらしい。

 最初は鬼人ってことでオーガと同種と思ってビビったが、この人たちはオーガとは全然違うらしい。

 見た感じは日本の昔のお武家様のスタイル。

 戦闘民族ではあるけど、知能もあって話はちゃんと通じるらしい。

 何で西洋圏に属するこの世界で突然に和装?

 と、言われても、それはエロゲの世界という以外に説明のしようがない。

 女の子には色んな属性があったほうが良いだろう。

 そういう身も蓋もない理由ということで納得するしかない。

「でも、どうしてそちら様はオーガキングの討伐をしているんですか? 森の亜人同盟として今回のオーガ狩りは猫耳族の仕事でしょう?」

「我ら鬼人族は同盟の中では武闘派で知られていてな。猫耳族を蔑むわけではないが、オーガキングを先に猫耳族に討伐されたとあっては……武人としては黙っておけぬということだ」

 事情は大体わかった。

 ってか、この人本当に別嬪さんだな。

 エリスみたいに可愛いとかじゃなくて、物凄い綺麗って感じだ。

 凛々しい眉毛で、まつ毛とか信じられないくらいに長い。

 腰までの黒長髪はツヤツヤで、長身でスラっとした手足はモデルさんを思わせる。

 7割の美人に、3割のカッコよさと凛々しさって感じか?

 と、そこで俺はあることに気づいて「はっ!」と息を呑んだ。

「どうなされたのだサトル殿?」

「あの、後ろを向いてもらっても良いですか?」

「ああ、構わんが?」

 訝し気な表情で鬼のお姉さんは後ろを向いた。

 そして俺は「やっぱりだ」と絶句したのだ。

 前提を説明しておくと、お姉さんの服装はさっきも言ったが和装だ。

 更に言うなら巫女っぽい服装をしていて胸には胴当て、左手には籠手だ。

 で、お約束通りに腰には刀を差している。そんでもって、下半身は袴(はかま)を着ているわけだ。それで後ろを向いた彼女のお尻は――


 ――丸出しだった


 袴が隠しているのは前だけで、後ろはやっぱり布がない。

 上半身は完全に普通で、下半身についても前面は普通だ。

 けど、下半身の後ろだけ布がない。つまりは大昔のギャグマンガに出てきたびんぼっち〇まスタイルなのだ。

 つまりはTバッグ状態のフンドシがモロ見え状態で装着されていたのだ。

「ともかくよろしく頼む。私は鬼人族の里のアカネという」

 やっぱり思った通りだ。

 自己紹介にあったとおり、この女性はゲームのヒロイン一人である――鬼姫侍:アカネだった。


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