彼らの時代

本編完結に際して、たくさんの感想やお祝い、労いのお言葉をいただきました。

全て大切に読ませていただきました。本当にありがとうございます。


今回はこのお礼と、書籍版『ひねくれ領主の幸福譚』3巻続刊のお知らせをさせていただくのに併せて、後日談とは少し違うかもしれませんがおまけ的なコンテンツを更新いたしました。


書籍のお知らせについては最後の方に詳しく記載させていただいております。


★★★★★★★



〇ノエイン・アールクヴィスト

初代アールクヴィスト大公。アールクヴィスト大公国建国の祖。

キヴィレフト伯爵家の生まれだが、父親であるマクシミリアン・キヴィレフトの庶子の立場である。生家での立場や家族との関係は極めて悪く、子供時代の後半は伯爵家の屋敷の片隅で監禁されるようにして暮らしていたとノエイン本人によって語られている。

ただし、異母弟であるジュリアン・キヴィレフト伯爵とは成人後に和解しており、以降は兄弟として良好な関係を築いている。このことが、現在のアールクヴィスト大公国公都ノエイナとキヴィレフト州州都ラーデンの姉妹都市関係にも繋がっていると言われている。

十五歳で生家から放逐され、アールクヴィスト領(当時は士爵領)の領主となってからは、その知識と魔法の才を活かし、才能ある人材を見出して重用し、ロードベルク王国の貴族社会でも頭角を現す。

戦場においても戦術面で独特の発想から功績を挙げており、ロードベルク=ランセル戦争での複数の戦功を経て子爵まで陞爵。その後に第一次ベトゥミア戦争での活躍が認められ、ロードベルク王国より独立してアールクヴィスト大公国を興した。

ノエイン自身が戦場に立ったのは第二次ベトゥミア戦争が最後だが、ノエインの考案したゴーレムによる集団戦術や、アールクヴィスト大公国で再発見されたクロスボウ、バリスタなどの兵器を用いる戦術は、その後もアドレオン大陸南部を中心に近世まで使用された(攻撃用魔道具技術の再発見と改良、魔導自動車などの発明により、現在ではいずれの戦術も廃れた。ゴーレムが武器として用いられるのも、暴徒鎮圧や施設警備など一部の場面に限られる)。

為政者としての評価は極めて高く、民の庇護を最重要視し、臣下に対しても極めて優しい人物であったと数々の文献に記されている。ノエインの発言の記録においても、「臣下と民の幸福」「臣下と民への愛」などの言葉が度々出てくる。

確かな報酬を示し、為政者自ら動く姿勢を示すことで人々の心を掴む手法は現代においても評価されており、自己啓発書などにノエインの名を冠したものが数多く存在するほか、政治家や起業家などが尊敬する人物として名前が挙がることも多い。

また、獣人や奴隷身分の者に対しても公平な扱いをするなど、先進的な倫理観・人権意識を持っていたことでも知られている。

ただし、その人格面においては賛否両論が残されており、自身の庇護下にある者以外にはどちらかというと冷淡だったとも言われている。

第一次ベトゥミア戦争では、勝利のためにやむを得なかったから、という理由で数千人に及ぶ他領の民を殺害したという記録もあり、こうした事実の結果としてロードベルク王国の一部地域にはノエインを「ベゼルの悪魔」などと呼ぶ風習も未だ残っている(ノルトリンゲン州の知事が公の場で、ジョークとしてこの異名を出したことが問題となり、当時のアールクヴィスト大公に謝罪する事態に発展した例がある)。

総合的にはやはり相当に高評価される歴史上の偉人であり、特にアールクヴィスト大公国においては神聖視されている。


〇クラーラ・アールクヴィスト

ノエインの妻。第一公妃。現在のケーニッツ州の地域を治めたケーニッツ伯爵家(当時は子爵家)の出身で、ノエインが士爵だった頃に嫁ぐ。アールクヴィスト大公国の開拓初期よりノエインを支えていたことから、ノエインが「建国の父」と呼ばれるのに対して「建国の母」と呼ばれることもある。

教育者としての功績が大きく、身分や種族を問わずあらゆる者に教育を施す学校制度(大公立ノエイナ高等学校)の運営実務を担ったことから、アドレオン大陸における公教育の基礎を作った人物として評価されている。大公立ノエイナ大学の系列校である大公立クラーラ女子大学にその名が残る。

また、歴史学者としても一定の功績を残しており、クラーラの研究活動の結果として、ロードベルク王国北西地域の歴史とアールクヴィスト大公国初期の歴史の関連が体系的な史料として残っている。

穏やかな性格の人物だったと語られており、時期としては自身の結婚より早くノエインの寵愛を得ていた第二公妃マチルダとの仲も良好だったとされている。ノエインとは夫婦として仲睦まじかったことが分かるエピソードが多く残されており、理想的な夫婦の在り方として現代でも度々二人の名前が挙がる。

「実は貴族社会の裏で狡猾に暗躍し、ノエインの立身出世を誘導することで自身の地位向上をも成した」という都市伝説が一部で語られているが、これは映画『クラーラ ~優雅で数奇な人生~』の影響である(映画の内容の多くは史実とは異なる完全な創作である)。


〇マチルダ・アールクヴィスト

ノエインの妻。第二公妃。ただし晩年までは自身の意思でノエイン所有の奴隷という立場にあり続けた。

歴史の表舞台に立った人物ではないため、このマチルダについて詳細に記載した文献は少ないが、クラーラの記したノエインの伝記や、ノエインの臣下たちの手記、その他の各種文献の中に度々登場していることから、その立場や人物像はある程度明らかになっている。

ノエインが九歳の頃から専属の奴隷として仕えていたことが分かっており、ノエインと出会った時期はクラーラよりも前になる。極めて献身的な姿勢でノエインに接し続けていたこと、ノエイン自身もこのマチルダを傍に置くことに過剰なまでにこだわっていたことが分かっており、歴史学者や心理学者から、この二人が精神的な依存関係にあったのではないかという指摘も多数挙がっている。

ノエインに忠実に仕え続けたことから、アールクヴィスト大公国とその周辺地域においては忠実で献身的な姿勢を指して「まるでマチルダのような」などと表現する文化がある。また、その名前は大公国における女性名として未だ人気が高い(我が子にマチルダのような素直で真面目な人間に育ってほしい、という由来とされている)。


〇ユーリ・グラナート/マイ・グラナート、ペンス・シェーンベルク/ロゼッタ・シェーンベルク、ラドレー・ノルドハイム/ジーナ・ノルドハイム、バート・ハイデマン/ミシェル・ハイデマン、エドガー・ロイシュナー/アンナ・ロイシュナー、ダミアン・クレベスク/クリスティ・クレベスク、ダント・キルシュタイン、リック・ベイレフェルト、ヘンリク・サロワ/キンバリー・サロワ、ジェレミー・バルトス/セシリア・バルトス、グスタフ、アレイン、メアリー、コンラート、ザドレク・ヴォルツ

いずれもアールクヴィスト大公国の黎明期を支えた貴族あるいは名誉貴族として歴史に名が残されている。

それぞれの世襲貴族家は現在でも大公国の名門貴族家として存続しており、著名な軍人や政治家、官僚、学者、技術者を度々輩出している。名誉貴族たちの家系も、現在は姓を得て存続しており、子孫の活躍が確認されている。


〇フィリップ、ドミトリ、ヴィクター、ダフネ

大公国における主要企業の創設者として、それぞれ経済界で名が知られている。


〇セルファース

大公立セルファース総合病院などにその名が残る。病院の敷地内にはこのセルファースと、彼の弟子であり初の大公国出身の医師であるリリスの銅像が建てられている。


〇ハセル

大公国におけるミレオン聖教の布教に努め、その功績を認められて晩年に総主教の地位を与えられた。



〇オスカー・ロードベルク三世

通称「守護王」。二十九年の治世のうち前半は、ランセル王国やベトゥミア共和国の侵攻に対する防衛戦争に追われた。

その際の政治的な立ち回りには専門家の間で詰めの甘さを指摘する声が多くあるものの、王として即位して間もない時期から多くの戦争に対処することを強いられた点などを考慮し、擁護する声も同程度ある。

結果的にはロードベルク王国領土を減らすことなく(むしろ治世の後半ではパラス皇国との戦いを経て領土を拡大している)、ベトゥミア共和国から得た賠償金やランセル王国との国交正常化、パラス皇国との正式な停戦協定の締結、大陸北部との関係強化によって王国の経済的発展を成したことから、名君と評されている。


〇ヘルガ・レーヴラント

アドレオン大陸における獣人差別撤廃運動の先駆者であり、偉人の一人として歴史に名を残している。

また、父ガブリエルと共に比較的早期から大陸北部と南部の関係強化に貢献したことでも知られており、アールクヴィスト大公国と北アドレオン連邦を繋ぐヘルガ街道にその名が残る。

このヘルガ自身は主に対話による平和的な獣人の地位向上を目指した人物であるが、近年の北アドレオン連邦において暴力的な獣人地位向上運動を展開する政治団体「ヘルガの悲願」が彼女の名を掲げていることが問題視されており、子孫であるレーヴラント家は同団体にヘルガの名の使用停止を要求している。


〇アンリエッタ・ランセル

ランセル王国中興の祖と謳われる女王。当初は「暴虐王」カドネ・ランセルに一部のランセル王国貴族たちが対抗するための象徴として台頭し、成人前に即位した後もあくまで象徴的な君主として君臨していたが、成人後は徐々に為政者としての頭角を現す。

アドレオン大陸西部との関係強化や、大陸南部の他国と比べるとやや遅れをとっていたランセル王国の文化的・経済的発展を成したことから、名君の一人として語られている。


〇アルノルド・ケーニッツ

一般的な知名度は低いが、アールクヴィスト大公国の建国においてノエイン・アールクヴィストに重要な助力をし、ロードベルク王国北西部地域の発展に寄与した人物として、一部の歴史学者やアマチュアの歴史研究家から高い人気を誇る。

また、ケーニッツ州においては地元の偉人として名が知られ、州都レトヴィクの一角に銅像が立てられている。



〇アイリーン・フォスター

ベトゥミア共和国の歴史において最も著名な軍人の一人。

後に「第一次ベトゥミア革命」と呼ばれる、当時の多数派閥(富国派)の政治家やその後ろ盾である豪商たちが共和国から追放された政変を実行した人物とされる(「革命」の名がついているが、実際は一部の政治家と軍人の主導によるクーデターとしての面が大きい)。

将として極めて有能な人物であったと語られており、ベトゥミア革命後の国内各地での富国派残党の討伐や、富国派政治家たちの亡命した隣国との戦争で尽く勝利を収めている。

軍人として一線を退いた後は政界入りし、直後に首相に指名され、二期八年という長期に渡って首相を務めた(ただし、これはアイリーン個人の国民からの人気と、偶然に平和な時期が続いたことによる部分が大きく、首相としての功績は凡庸なものに終わっている)。



★★★★★★★


書籍版『ひねくれ領主の幸福譚』3巻、2023年2月25日に発売されます。

今回はついにクラーラが登場。マチルダとともに表紙を飾っています(書影は作者Twitterや近況ノート、オーバーラップ様公式サイトやTwitterなどで公開されています)。


今回も加筆修正によって内容を大幅ブラッシュアップしています。Web版とは一味違うノエインたちの物語にどうかご注目ください。

すでに各販売サイトで予約受付が始まっております。ぜひよろしくお願いいたします。

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