罪咎の星と薄明の空

祥之るう子

序章 天駆ける星々が導く運命

星降る村のふたご

 はるか昔。

 この地に、天より神がり立った。

 神は、人間の青年と出会い、自分を天の追手おってからまもってくれたその青年の願いを聞き、森や川をおつくりになり、この国――アスクレフィオス聖王国せいおうこくを豊かにしてくださった。


 そんな、建国けんこくの神話に登場する森、マルフィーク大森林だいしんりん

 この大きく深い森は、豊かな恵みをこの国にもたらしてくれる大切な存在。


 森から海へと流れ出る川は、美しいき水で、多くの生命をはぐくんでいるし、人々の生活用水でもある。


 森の中では動物たちが多く生息せいそくし、狩りの獲物えものに困ることもない。




「ソル、森の中に入ったら危ないんだよ」



 その森のほど近くにある村の外れ。

 うすい金色の長い髪を、左右で三編みにした、六歳の幼い少女が、自分の手をひく、同じ身長、同じ色の髪、同い年の少年に、そう声をかけた。


「大丈夫だよ、ララ。森の中じゃなくて、入り口までだから」


 少年――ソルは、おびえる三編みの少女……自分の双子の妹であるララの手を、さらにぎゅっと強くにぎった。


「でもソル、お母さんは危ないから、子供だけで村から出ちゃいけませんって言ってたじゃない、だめだよ。どうして急に森に行きたいなんて言い出したの?」


「昨日、子猫を見たんだ。森の方に行ったんだよ」


「子猫?」


「もしまだ森の入口にいたら、連れて帰ってきたいんだ。森の中には、野犬だとか怖い動物もたくさんいるって、父さんが言ってただろ? 森に入ったら、アイツ、食べられちゃうんじゃないかと思って」


 ソルの話を聞いたララは、意を決したように足を早めて、ソルの横に並んだ。


「仕方ないなあ。一緒に行ってあげる」


 ララは、一度いたずらっぽくツンとしてから、にっこりと微笑ほほえんでソルを見た。

 ソルは、ほほを赤くしてから、小さな声で「ありがとう」と言った。


「ソルは、ララのお兄ちゃんだからね! ララが付き合ってあげる!」

「何だよそれ。何か逆じゃないか?」


 ソルは照れかくしに笑った。

 幼い双子の兄妹は、しっかりと手をつないで、村の出口までけ出した。

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