前夜祭9
「久しぶりだな。アランの料理を食べるのは……」
ティラシェイドは目の前に並べられている豪華な食事を見ながら懐かしそうに言った。
「そんなに喜んでいただけると光栄です。ティラシェイド王子の好きなものをそろえてみたのでどうぞお召し上がりください」
アランはにこやかな顔をしながらティラシェイドを見る。
「ではさっそく頂こうか」
ティラシェイドが食事を摂ろうとナイフとフォークを取る。
『じゃあ、存分に楽しんでくれ』
すると、真っ白だったティラシェイドの目の前にある壁に突如として映像が浮かび上がる。そこにはティラシェイドとさほど歳の変わらない青い髪の男が映し出された。
「青い部屋のパーティがはじまったようですね」
それを皮切りにいくつもの映像が次々と映し出され、冒険者たちが楽しげに食事をとっている姿が映し出されていく。
「みな、美味しそうに食べるなあ」
「それでもクライシスハンターの坊やの食欲がすごいですね。あの子は一応仕切る役割のはずですが、冒険者そっちのけで食べてらっしゃいます」
アランのいうようにクライシスハンターの坊やは次々と口の中に食べ物を頬張る。その後ろにはそんな彼を愛おしそうに見ているペルセレムの姿がある。
「あの魔法使いは例の鍵師のパーティの少女だな。食べっぷりといえばあっちもすごいぞ」
ティラシェイドの指さした先にはムメイジンの姿がある。クライシスハンターの坊やと負けず劣らずに次々と食べ物を口の中に入れている。その傍らには呆れ返っているキイの姿があった。
「彼もキイくんのパーティの子ですね。ラノベラーらしいですよ」
「そのようだな。鍵師と同じ色にきたか。青ということは彼のところだな。パーティが終わったら彼に聞いているとするか」
「聞くとは? キイくんの様子ですか?」
「それもあるが、あのラノベラーのこともだ」
アランは首をかしげる。
「あのラノベラーになにか?」
「腹が減った。食べてから話をしてもいいか?」
「はい。かまいませんよ。時間はまだありますから」
「では頂こう」
ティラシェイドは食事をとることにした。
その間も壁にはいくつもの部屋に分かれた冒険者たちの姿が映し出されている。その中で各パーティを仕切っているアメシスト王国からやってきたものたちはなぜか冒険者たちに目を光らせているのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます