前夜祭7
「ほえええ! ここどこですか!? 皆さんはどこですか?」
「みんなどこ? 僕を一人にしないでよ! 知らない人ばかりだよ」
ペルセレムが不安に襲われているその隣では同じように狼狽えている男がいた。
そのどすの利いた声とは裏腹に弱気な発言する男にペルセレムは冷静ならざるおえず、男へと視線をつける。そこには筋肉ムキムキな大男がいる。いかつい顔をしているし、堂々としててもおかしくない見た目をしているのに目は不安を隠しきれておらず緩んでいる。
しかも猫背で人は見た目ではないことを改めて思わせられる。
「ここどこだよ! ルイはどこ? レイヤはどこ? 」
大男は周囲を見回しながら仲間らしき人物の名前を呼ぶ。
いないようだ。
仲間たちは別の部屋に転送されたのだろう。
(わたしの仲間たちもいないわよね。いてくれたらいいのに)
ペルセレムももしかしたらと思いキョロキョロしてみるもキイたちの姿はない。みんなバラバラだ。
「もしかしたら一生会えないのかな? ぼくは一人ぼっちで生きていかないといけないのかな?」
大男はボソボソといっている。目には涙。
「あのお」
ペルセレムは思わず大男に話しかける。
「大丈夫と思いますよ。パーティが終わればすぐに会えますよ」
「ほんと?」
「はい。もちろんです」
「ほんとうにほんとう?」
「はい。大丈夫です! 心配いりません!」
ペルセレムは自分にも言い聞かせるように言う。
すると大男は突然泣き出すなり、ペルセレムに抱きついてきた。
「きゃっ!」
「ありがとう! ありがとう! 君は優しいね」
そういって泣き出すのだ。
「どっいたしまして! って離れてください! お願いします」
「モグモグ。もう仲良しになったのかなあ。モグモグ」
ペルセレムはその声にドキッとする。振り向くとペルセレムの直ぐ側で座ってパンを頬張っているフェルドの姿があったのだ。
「きゃあああ! フェッ、フェルドさま!」
ペルセレムは思わず悲鳴を上げてしまった。だれもが彼女に視線を送ったのはいうまでもない。
「そんなに驚かなくてもよくねえか? 俺、アンタに何かした?」
フェルドはやれやれとコリを上げながら頭をかく。
「ちっ違いますう」
「だったらなに?」
「そっそれは……」
「ダメダメダメ」
ペルセレムがどう返事すべきか迷っていると、フェルドとの間にムキムキの男が割り込んできた。
「女の子困らせたらいけないんだぞ。あんたは何者なんだよ」
「おれ? 俺は」
フェルドは持っていたパンを口に頬張ると立ち上がる。
「モグモグ、俺はモグモグ」
「食べながらしゃべってたら何言っているかわからないよ!」
「じゃあモグモグ。ちょっとモグモグ。まてモグモグ.」
やがてゴクリと飲み込む音が聞こえる。
「持たせたな。俺はフェルド=ニート」
彼は突然浮かび上がるとそのまま一回転し舞台の上に着地する。
「俺はこの“赤”の部屋を任されたものだ。よろしくな」
そういいなから背筋を伸ばしながら敬礼をした。
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