前夜祭5 色③

 この世界にはあらゆる生命において“色”で分けられている。そのほとんどが種族といったもので遺伝的な要素で決定していることが多い。それゆえに見た目でもその人物が“何色”なのかを分別しやすい事が多いのだが、異なる種族同士の間で生まれた存在もしくは別の世界からやってきた“異世界人”である場合は見た目とは異なる“色”を示すことがある。


 ゆえに“色”の判別は見た目ではなく“色”を判別するための特殊な魔法によって行われるのだ。


 その魔法というのが先程キイが入った魔法陣に刻まれており、“色”判別と転送魔法が施されているものであった。


 さきほども言った通り“色”は見た目どおりのときもあるが見た目とは異なる“色”を持っている場合もある。キイがまさに後者だ。


 キイの髪の色は赤く、瞳の色は緑だ。その見た目からだと“赤”か“緑”に分類されそうなのだが実際にやってきたのは“青”色の人たちのいる部屋であった。そこにはいかにも“青”だと判断できるような青い髪のものや青い瞳のものもいる。もちろん青を示すものを何一つ持たない者たちも何人も存在しているのだからキイが特別ではないのだ。


 そしていま目の前にいる男は典型的な“青”色をもつ男。青い髪と青い瞳。それはあきらかに純粋な青の民の特徴である。


 キイが青の民に会うのは記憶の中では初めてのことだ。


 その青の民の第一印象は爽快で人懐っこい笑顔を浮かべているがその奥底にはなにか含んでいるように思えてならない。


 一体この男は何者なのかを勘ぐりたくなる。


「そんなに警戒するなよ。こんな髪をしているが一応“ラノベラー”なんだよ。そのあんたのお仲間と同じなのさ」



 男が指さした先を振り向くとなぜかうつぶせに倒れ込んでいるムメイジンとキョロキョロと興味津々に見回している金髪の女がいた。ムメイジンが倒れる羽目になったのは女に踏みつけられているためらしい。


「さっさとどけろよ! 女!」


「あっ、悪い」


 女はようやく気づいたらしくムメイジンの背中から足を退けた。


 ムメイジンはやっと解放されたと言わんばかりに上半身を起こしながら息を吐く。


「ジン! お前も“青”なのか?」


「そうみたいだな」


「俺もだぞ。俺も」


 まだ状況がわからずに困惑しているムメイジンをよそに金髪の女がなぜかキイにアピールするかのように自分を指さしながら前のめりになる。


 キイは仰け反り顔を歪ませる。


「近い。近い。離れろ!」


 キイは異様に近づいてくる女の顔を押さえ込んてま遠ざけた。


「ハハハハハ。照れるなよ。俺がいいんだからってさあ」


 そういいながら女が自分の大きな胸を強調するかのように揺らし始めるのだ。それをみたキイの顔が熱くなったのもいうまでもない。


 ちなみにムメイジンは鼻を抑えている。指の間から血が流れていることからかなり刺激的だったようだ。


「よし。とりあえず皆揃ったようだからさっそく“青”の交流会をしようじゃないか」



 すると青い髪の男がパンパン手を叩く。


“青”の部屋にいた冒険者たちは一斉に青の髪の男のほうをみる。


「まずは自己紹介だな。俺はこの“青”のパーティを仕切ることになったダイチ=アオサワという」












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