鍵師はドラゴンの子供と出会う6 全てを破壊しながら突き進むバッファロー…
ドドドドド
バキーン
バタバタ
無数の足音が大きくなるとともになにかが倒れる音が響き渡り、地が揺れ始める。
「なんだよ!」
キイが振り返ると次々と木々が薙ぎ倒されていくと同時に開けた道からは無数のバッファローがこちらへと向かって突進してくるではないか。
「なんだ! あれ!?」
「見ての通りバッファローだ。我らの子供を狙ってきた」
「はあ?」
「早くいけ! いますぐにいくのだ!」
「ああくそおお! なんで俺がこんな目にあうんだよ」
キイはドラゴンの子供を腕に持ったまま駆け出した。
「我らの子は渡さぬぞおお」
キイが走り去るのを見届けると二人のドラゴンがバッファローのまえに立ちはだかる。
しかし、バッファローは自分たちよりも遥かに大きなドラゴンの姿に怖じ気づくことなく真っ直ぐに進んでくる。
「止まれ! 止まれ! 」
「そうだ。止まるのだ! 我の子を追いかけるではない!」
ドラゴンたちが呼びかけるもまったく聞き耳を持つわけでもなく、あらゆるものを破壊しながら突進してきているのだ。
「うわわわ! とまらぬかあああ!」
ドラゴンたちの焦ったような声はドラゴンの子供を抱えたまま逃げ出したキイの耳にも響き渡る。
「つうか! バッファローの大群ぐらいどうにかできはいのか? 一応ドラゴンだろ!?」
キイは走りながら愚痴る。
「ああ無理だな」
するとキイの腕に収まっているドラゴンの子供の声が聞こえてた。
「どういうことだ?」
「だってぼくの両親ってさあ。弱いもん」
「はああ? どういうことだ?」
ドラゴンがキイを見る。
「いったままの意味だよ。うちの父ちゃんも母ちゃんもドラゴンのなかで史上最弱なドラゴンなのさ。ゆえにぼくもよわーいドラゴンなわけだよ」
「なんだよ! そりゃあ。それにしては偉そうに聞こえるのは俺だけか」
「というわけで頑張って僕をバッファローから守ってくれなあ。鍵師さん」
「まじかよ! ってなぜ俺が鍵師だって知ってんだ?」
「だって母ちゃんが言ってたもん。鍵師がくるから出てきたらそいつと一緒に冒険者になれってさ」
「なんだよ。それ? お前って母親の腹の中にいながら会話してんのか?」
「当たり前じゃん。人間もそうでしょ」
「そんなことできるか! 」
「ふーん。変なの」
「ドラゴンのほうが変だ」
そんな会話をしている間にもバッファローの足音がキイたちのほうへと近づいてくる。
「おいおい。近づいてきたぞ! お前の親はどうしてんだよ?」
「うーん。飛んで逃げてるみたいだよ」
そういわれて振り返ってみると確かに二匹のドラゴンが天高く飛び立っている姿が見える。
「まじかよ」
「うん。最弱だからね。 ほらほら走れ! もうすぐ出口だぞ」
「本当だ! って山でたら追いかけてこなくなるのか?」
「さあ? 知らない」
「なんだよ! それ!?」
背後には迫ってくるバッファローたち。
冒険者になれず、バッファローに踏みつけられてしまうのではないかという絶望感がよぎるのであった。
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