前夜祭2 鳥が促す
「皆様! 早クオ入リ下サーイ!」
「オ入リ下サーイ!」
突然現れた金髪の女が何者かを聞こうとしていると、それぞれのパーティのそばにいた鳥たちが羽をばたつかせながら一斉に叫び始める。だれもが鳥の方へと視線を向けると鳥たちは館の入口の方へと飛んでいった。
そのまま視線を動かしていくと館の入口には数名の人間がいることに気づく。鳥たちはその中にいた白髪の老人の方へと近づくと、老人の体に吸い込まれるように消えていった。
「前所長さんだ」
老人を見たショセイがつぶやく。
「あいつらは」
キイは老人のすぐ後ろには“行倒れ”とその連れの姿があることに気づく。
「アメシスト国の王子だわ」
“行き倒れ”たちがあそこにいるということは冒険者ギルドのスタッフだったのかと思ったキイはすぐさまアイシアによって違う可能性を提示されることになる。
「アメシストの王子? ということはあいつらって」
「クライシスハンターですう」
ペルセレムが応えた。
「え?」
「えええええ!?」
キイたちは驚愕の声をあげる。すると周囲の視線がキイたちに注がれてしまう。
「すみません」
すぐさま謝ると周りの視線はアメシスト国の王子に注がれる。
気を取り直したキイたちもまた舘の方を見ると、“行倒れ”がこちらを見ながら口に笑みを浮かべていることに気づく。そのなにか含んだような笑みにキイは苛立ちを覚えた。
「みなさん。さあ遠慮なさらずにお入りください」
いつの間にか王子たちの姿はなく前冒険者ギルドの所長だったアラン=グリフィスの姿だけがあった。
彼はそういうと館の方へと入っていく。
「よし! 入るとするか!」
最初に屋敷の方へと足を踏み入れたのは先程ムメイジンに話しかけてきた金髪の女性だった。それにつられるかのように次々と参加者たちが屋敷の方へと入っていくなかでキイたちのパーティーはその場に佇み入って良いものかと戸惑っていた。
なぜなら前夜祭に参加しているパーティーたちのほとんどがあきらかにレベルが高い人たちばかりであるためだ。先程気安く話しかけた女性のパーティーもそうだった。なにげなく調べてみたショセイはそのレベルをみるなり度肝を抜かすほどだったのだ。あきらかにアレックスたちのパーティーと肩を並べるほどのレベルでとくに金髪の女性は抜群の成績を誇っていたのだ。
「
スマホに視線を向けていたショセイがつぶやく。
「ところでラノベラーってなに?」
先程まで呆然としていたムメイジンがよくやく口を開いた。
「お前みたいなやつのこと。ようするに異世界人だな」
ショセイの代わりにキイが答えた。
「ふーん。そうか! 俺みたいなやつ他にもいるのか!」
「そりゃあ、そうだよ。なにせ英雄も異世界からきたらしいからね」
「英雄?」
「そう英雄。ティラシェイド王子とともに魔王を倒した人たちのなかにも異世界からきた人がいたんだよ。たしかその人がラノベラーって名付けたんだよね」
ショセイがそう答える。
「ソコソコ!早ク入リナサーイ」
すると鳥がキイたちのそばまで寄ってきた。
気づけば館の前にいるのはキイたちだけになってしまったようだ。
「早クシナイト閉メルゾ。冒険者資格モ剥奪シマース」
「はあ? 何だよ! それ!」
キイたちは慌てて屋敷の方へと入っていった。
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