前夜祭1 トリあえず

「“史上最弱”ノ皆サン! ヨウコソ! 前夜祭へ」


 とりあえず会場となる冒険者ギルド前局長の館へと訪れたキイを出迎えたのは1話の鳥だった。青くて目がくりっとした可愛らしい鳥がニコニコと笑顔を浮かべながらキイたちの前では羽をばたつかせているのだ。


 鳥は一羽ではない。


 キイたち以外にも会場へ訪れたパーティに対して似たような鳥が話しかけている。周囲を見回すと何十羽もいそうだ。


 その様子を見ているとふいにキイはアイシアと出会った頃のことを思い出した。


 あのときアイシアは陰気臭い冒険者に絡まれていて、たまたま居合わせたキイが巻き込まれてしまったのだ。そのときに無数の“ヤタガラス”が現れて難を逃れた。それから勢いでアイシアをパーティに誘うことになってしまったのだが、後悔はまったくない。むしろアイシアがいてくれてよかったとも思っている。


「なに? キイ?」


「いや。 なんでもない」



 無意識に見ていたキイはアイシアに怪訝な視線を向けられて思わず顔をそらした。


 各パーティに話しかけていた鳥たちが空をまるで踊っているかのように優雅に飛び始めている。その様子に参加者たちが感嘆に声を上げている。その飛び方というのが美して楽しそうに見えるからだ。

  

「なんかブルーインパルスの飛行見てるみたいだ!」


 ムメイジンがハイテンションにいうが、キイたちには“インパルス”という言葉の意味がわかるはずもなくきょとんとする。ムメイジンはそんなキイたちに“ブルーインパルス”の意味など説明するつもりもなく空を見上げていた。


「“ブルーインパルス”! 自衛隊のブルーインパルスか!?」



 そのとき突然女性の甲高い声が響き渡った。


 キイたちは驚いて声のする方を見ると、一人の金髪の女性が目を輝かせながらこちらを見ているではないか。


「おい! あんた! ブルーインパルスを知っているということは」


 金髪の女性はズカズカとムメイジンのほうへと近づいてきた。その勢いに押されたのか周囲の人達は金髪の女にたじろぎながら道を開けていく。


 ムメイジンは顔を引きずらせながらキイのすぐ後ろに下がる。


「あんたってもしかして!」


 金髪の女はキイたちの目の前にいる。


 年齢はキイたちよりも少し年上ぐらいだろう。白い肌に青い瞳。金髪の長い髪。整った顔立ちは男ならだれもがドキッとしてしまうほどの美女だ。


 だからすぐ身近まで迫ってきている女にキイやムメイジンが顔を赤くなるのは不思議なことではない。

 そ

「なんなのよ! あんた!」


 そんなキイの様子を見ていたアイシアは思わず女のほうへと詰め寄ろうとするが、女はまったくアイシアに気づいていない。


「あんた! もしかして!」


「うわ!」


 女は邪魔とばかりにキイを横へ押し倒すと、ムメイジンの両肩を掴んだ。


「いてえ! なにするんだよ!?」


 キイが尻餅をつくなり怒鳴りつけるも、女はまったく聞いていない。


「あんたって異世界人ラノベラー!?」


「はい?」


 ムメイジンは突然の問い詰めにキョトンとする。







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