王子は会場となる住宅の内見をする

「ここが前夜祭で使う館になるわけか」


 ティラシェイド王子は冒険者の集う大会の前夜祭が行われるとされる館に来ていた。


「そうでございます。王子」


「しかしねえ。なぜお前の家が会場になるわけなんだ?ほかにももっと広いところがあるだろうに」


 会場となるのは特別なイベント施設ではなく、冒険者ギルド、シャルマン国ステラ本局の前局長であるアランの舘だと聞かされたティラシェイドが驚いたのは言うまでもない。


「そうなのですが、なかなか良い場所が見つからないのでございます」


「ならラシャン王に頼めばよいではないか?」


 ラシャン王は現シャルマン国の若き王様である。十数年前に若干18歳で王位を継いでいる。


 王位継承権をもつティラシェイドとはさほど歳がかわらないのだが王としての経験はそうとうなもので国民からの人気も高い。ティラシェイドにとってはそうでありたいと思える王である。そんな彼に頼めば必ずなにかしろ力を貸してくれただろう。簡単に会場を手配してくれたのではないかとティラシェイドは考える。


「たしかにそうではございますが、王もお忙しい身。そう安々と私共のお願いを聞いてくださるとは思えません。」


「そうなのか? まあたしかに今回の訪問に関して王の迎えはなかったなあ。なにか問題でもあったのか?」


「そういうわけではございません。お忙しいのはあなたさまの父上も同じでしょ」


「たしかにな」


 ティラシェイドは父のことを思い浮かべる。


 たしかに父は多忙だ。


 アメシストはアウルティア大陸のなかでは一番の大国で人口も多い。多くの国との交流もあり、毎日のように来賓客も訪れている。来賓客の対応やらそのほかの雑務や公務。毎日休むヒマがないというほどに父は走り回っている。


「いや俺はまだまだだな」


「はい?」


「いや、俺は王になったおりの激務に耐えられるかと心配になってしまったんだよ。俺ってけっこう自由にさせてもらっているからな」


「今回の訪問も含めてですか?」


「今回は父からの命令だ。シャルマン国の大会を見てこいってな」


「ふふふふ。そういうことですか」


 なぜか楽しげに笑うアランをティラシェイドは怪訝に見る。


「さてともう少し私の館をご案内しましょうか」


「そうだな。アランの館を見ておきたい」


 そういうわけでアランの住宅を案内してもらうことにした。









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