鍵師はドラゴンの子と出会う2 危機一髪
村を出たキイは暫くの間山道を歩いていた。
村からはあまり出たことはないのだが、村のあるコウライ山と連なるムーア山には何度か訪れたことがある。ゆえにある程度の地理はわかっていた。
わかっているつもりだった。
「なんだよ。この道」
何度も訪れたことがあっても山の隅々まで熟知しているわけではない。そのため、もちろん道に迷っていった現象が起こる可能性があるわけである。
いままさにキイはその状態に置かれている。
よくよく考えてみたら、キイがひとりで山を歩くのははじめてのことだ。いつも誰かと一緒だったから何とも思わなかったのだが、いざひとりで入るとそこは全く知らない別世界のような空間が広がっていたのだ。もちろんそれは感覚的なもので実際には友人たちと一緒に入って遊んでいた頃とさほど変わらない。
不安がキイを道に迷わせてしまったということになる。
「こんな道あったか?」
気づけば見知った風景がなくなり、見たこともない木々が立ち並ぶ場所へと変わっていった。いったいどこからきたのだろうか。どこへ進めばいいのか。右を向いても左を向いもいままで見たこともない光景。知らない植物たちが生い茂っており。見覚えのない生き物がキイの様子をうかがっている。
さてどうしたものか。
しばらく思考していたキイは突然座り込む。
「とりあえず一先ず休憩! そのあとかんがえる!」
キイはそういいながら、バックに入れていたパン
を取り出すとムシャムシャと食べ始めた。
パンを半分ほど食べ終わった頃、なにやら空が騒がしくなってくる。
風が吹き荒れ木々が異様なほどのざわつきを見せ始める。
なんとなくキイの様子を見ていた動物たちもなぜか空を仰いでいる。
ゴーゴー
聞いたことのない音がキイの耳に響く。
なんだろうと視線を上へと向けた瞬間、なにか大きな物体がキイに向かって降ってくるではないか。
「うわっ!」
キイは慌てて立ち上がる。その勢いで持っていたパンが地面に落ちたことにも気づかないうちに避けようと駆け出した。
ドーン!!
着後、先程までキイが座ってパンをかじっていた場所になにかが激突する。その衝撃でキイの体が前へと飛ばされ地面に倒れ込む。
「いてっ!あぶねえ。危機一髪だったぞ。ってなんだよ!? いったい!?」
キイは四つん這いの状態のまま頭だけを後方へと向ける。
すると砂埃が舞っており、しばらく落ちてきた物体を隠していた。やがてホコリが薄れていき徐々に姿を表す。
「ドラゴン?」
白い鱗を持つドラゴンがぐったりと倒れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます