ティラシェイド王子の来訪7

「久しぶりだな。アランの紅茶を飲むのは。相変わらず美味い」


「それは嬉しいお言葉です。王子」



 齢90をすでに過ぎているアランはにこやかな笑みを浮かべながら自分の入れた紅茶を飲んでいるティラシェイド王子をみている。


 王子と会うのは本当に数年ぶりのこと。


 手紙のやり取りはしていたのだが、王子は公務で忙しく、アランもまたギルドの所長の仕事でアメシストに赴くこともできなかった。


 つい先日ギルドの所長を引退して余生を過ごすことになり時間ができるようになったことと、王子のシャルマン国への訪問が決まったことにより再会を果たすことができたのだ。


 とはいえども、滞在期間は7日間のうちにアランとの面会を果たせるのが来訪したその日のうちだけで残りは公務におわれることになる。


 忙しくなる前に王子には少しの時間でも休養ができるようにという考慮によって実現している。


「テッド。エドルフとフェルドが戻ってきたよ」


 のんびりとくつろいでいると部屋の扉が開き、メガネをかけた黒髪の男が入ってきた。


 テッドというのはティラシェイドの愛称でごく一部の親しい人たちのみが呼んでいる。 



「アキナオは行かなかったのか?」



 アキナオと呼ばれた男は中へ入ると扉を閉める。、


「ぼくは王子の護衛だよ。離れるわけにはいかない」



「お前は相変わらず真面目だなあ。たまには羽目を外すのも必要だぞ。どうだ? 久しぶりにあいつと俺の3人で飲むか?」


「遠慮しておくよ。彼の介抱するのは疲れるよ」


「ハハハ。あいつは本当に酒が弱いからなあ。それであいつはいつくるんだ?」


「大会の日には来るそうだよ。でもなぜ彼まで呼ぶ必要があるんだい?」


 アキナオの質問に王子はなにか含んだような笑みを浮かべる。


「それは……」


 コンコン



 王子が何かを言いかけると扉をノックする音が聞こえてくる。


「はい、どうぞ」



 王子の代わりにアランが返事をすると扉が開き二人の少年が姿を現した。



「王子さま! 言われた通り見てきたよ」


 茶髪の少年が陽気にいいながら王子のほうと近づいてくる。その後ろでは金髪の少年が「フェルド! 王子に向かってその態度はだめですよ」と狼狽えながらいっている。


「エドルフ。気にするな。俺は変に気を使われるのは嫌いだ。お前も自由にすればいい」


「ですが」


 エドルフは困惑する。


「本当にここにも真面目がいたよ」


「エドルフは仕方ないさ。家系が家系なんだからフェルドとは違う」


 王子はアキナオの言葉にそうだったなと納得する。


「それよりもどうだった? 例の人物は」

 

「普通かな。つうかまじで大丈夫かって感じ。冒険者らしいけどレベルが低すぎるだろう。なぜ気にするんだ?」


 フェルドが尋ねる。


「気にならないほうがおかしいだろう? グレイス=ロックウェルの息子がどんな子供か知りたいじゃないか」


 王子の言葉にアキナオとアランのみが納得したような顔をして、フェルドとエドルフはどういう意味なのか理解できずに首を傾げていた。







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