招待状

「結局あれはなんだったんだろう?」


 宿屋へ戻るとキイは二人の旅人のことを思い浮かべる。歳はキイとさほど変わらないぐらいの少年たちなのだが、どこか熟練した感じがする。


「ク……」


 するとペルセレムが口を開く。


「ペルセレム? 知っているの?」


「ク……」


「ク?」


「クラ……」

 


「うわあああ!」


 ペルセレムの言葉とかぶせるかのようにムメイジンの悲鳴が聞こえた。


 何事かとキイたちが振り返るとムメイジンはなぜか部屋の扉の方をみている。


「どうした?」



「ぬいぐるみが……」


「はあ? ぬいぐるみ?」


 キイたちはムメイジンの見ている先の方へふりかえる。すると扉の前にはライオンのような姿をしたぬいぐるみらしきものが置かれていたのだ。


「なんだよ。ぬいぐるみかよ。アイシアのか?」



 キイはアイシアを見る。


「ちがうわよ。ペルセレムのかしら?」


 アイシアが振り向くとペルセレムは首を横に振る。


「じゃあ、ショセイ?」


「ぼくはそんな趣味ないよ!」



「よっ! 諸君」


 するとぬいぐるみの方から声が聞こえてきた。



 キイたちははっと振り替えると先程まで座った状態で置かれていたはずのライオンのぬいぐるみが立ち上がって手を振っているではないか。




「ええええ!?」



「ぬいぐるみがしゃべったああああ!」


 そこにいるだれもがしゃべるぬいぐるみに仰天する。


 ぬいぐるみはしてやったりといわんげに仁王立ちになる。


「これ、魔法ですよ」


 そんな彼らの中で唯一冷静だったのが、おっちょこちょいな魔法使いペルセレムだった。


「魔法?」


「そうです。このぬいぐるみは魔法がかけられているんですよ。遠隔操作で動かしているって感じで、本当はぬいぐるみがしゃべっているわけではなくて、魔法をかけた人がぬいぐるみを通して話しているんです」


「正解。だてに魔法使いじゃないね」


 ぬいぐるみ、いやぬいぐるみを操っているらしい人物がいった。


「でも、なんで、魔法をかけられたぬいぐるみが俺たちの前にくるわけ?」


 キイが尋ねる。


「それは……」


「それは?」


 しばらくの沈黙がはしる。


「パパパーン! おめでとう!!」


「はい?」


 なぜかテンションをあげまくるぬいぐるみに首をかしげる。


「喜び給え! 君たちを招待しようではないか!」


「はあ?」


「ほほほほ、そんなに喜んでくれるか!」


「別に喜んでないぞ。つうか意味がわからないんだけど」


「実は明日大会の前夜祭を催すことになったのだ。本来ならば君たちのような弱小パーティはご遠慮いただいているのだが、今回は特別に大会参加者の前夜祭への参加がみとめられたということなのだ」


「なんじゃそりゃ」


「ゆえに君たちへ招待状をもってきたのだ。受け取り給え」


 ぬいぐるみは一方的な話をすると招待状をキイへと押し付けるように渡す。


「必ずくるのだそ。失礼のないような格好で来るのだぞ」


「はあ」


 ぬいぐるみはタタタタタと扉の方へと走るとそのまま出ていってしまった。


「なんだったんだ? あれ?」


「つうか、ものすごく偉そうだったぞ。なんか腹立った」


 ムメイジンの意見にキイたちは頷くのであった。






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