ティラシェイド王子の来訪6
「うめえ! この飯うめえよお!」
成り行きでキイたちは行き倒れを行きつけの安い飲食店へと連れて行くことになった。
キイたちのようなレベルの低いパーティがいく飲食店だ。庶民的で手頃な値段のメニューが並ぶため、貴族といった類の人物はまず寄り付かない。しかし、行き倒れるぐらいお腹の空いている旅人にとってはもってこいの場所ではあった。ゆえに行倒れはうまいうまいと嬉しそうにがっつりと頬張っており、その姿に機嫌よくした店主が次々と運んでくるし始末だ。
この行倒れの食事代は自分たちが払わないといけないのかと思っていたのだが、彼の同行者が自分たちが払うから心配しないでくれとキイたちの食事代まで払ってもらうことになった。
「そんないいですよ。私達は連れてきただけなんで」
「いいんです。連れがご迷惑かけたので」
一度アイシアが断ったものの結局は奢ってもらうことになり、キイたちも好きなものを頼んで食べることになった。
その間もペルセレムは異様なほどにソワソワしている。先程から豪快に食べている行き倒れを見ているのだ。それに気づいた行倒れが振り向くと顔を赤くしてアイシアの後ろに隠れる。
「なんだよ。ペルセレムのやつへんだぞ」
ムメイジンが不機嫌そうに言う。
「たしかフェルドとかいったかな。どうやらペルセレムの憧れの人みたいだぞ」
「はっ!? まじで?」
キイの言葉にムメイジンは焦りの表情をうかべる。ムメイジンがペルセレムに好意を寄せているのがいくら鈍感なやつでもわかるほどのあからさまな態度である。
だが、フェルドという行倒れのほうばかり気にしてるペルセレムが気づく様子もない。
「くった! くった! 」
何皿も立ち上げた行倒れのフェルドはぽんぽんとお腹を叩きながらいう。
「もう満足しましたか?」
「ああ、ありがとな。美味しい店つれてきてくれて」
そういってフェルドは立ち上がる。
「もう行くのか?」
キイが尋ねる。
「ああ、俺たちは仕事できてるからな。遊んでばかりいられないさ」
フェルドはキイからペルセレムに視線を向ける。
「あんた、元気みたいだな」
「はっはい! この前はありがとうございました!」
ペルセレムは頭を深く下げる。
「かまわないさ。それが俺達の仕事なんだからな。じゃあな。お嬢さん。大会を楽しみにしてる。がんばれよ」
「え?」
最後の言葉にキイはなぜか引っかかりを覚えた。
問いただす前に二人の少年は店を出ていった。
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