アランからの手紙
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ティラシェイド王子様
お元気してきますか?
あれから数年の時が流れ、私はすでに93になりました。ずいぶんと年を取ったものです。最近では足腰が弱ってしまい歩くこともままならなくなってきたのです。
ゆえに仕事を引退することになり、隠居することとあいなりました。
後継者として私が選んだのはまだギルドの職員になって間もないものではありますがとても優秀な人物です。ゆえに私は何の心配はしておりません。彼の者ならばうまくやっていけるでしょう。
いずれ、王子にも紹介したいものです。
話は変わりますが、近々王子はシャルマン国へおいでになるとのことですね。もし時間があればお会いしたいとのお手紙いただき光栄に存じます。私も貴殿と再会を心待ちにしております。
それと貴殿がいつかお会いしたいとの言う人物についてですが、もしかしたらお会いできるかもしれません。なぜなら、その人物も貴殿がご視察なさる予定の冒険者大会へのエントリーをしたためです。必ずやかの人物との面談ができるように手配できればと思っておりますのでどうか心待ちにしてくださいませ。
では大会でお会いしましょう。
親愛なるティラシェイド王子様へ
アラン=グリフィスより
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「もう引退しているのにどうするつもりなんだ?」
定期的にくるアランからの手紙を読んでティラシェイドはため息を漏らした。
「確かに会ってみたいとは思ってはいるが、わざわざ段取りさせてまで会いたいわけじゃないんだけどなあ」
「そのようにおっしゃらなくてもよいではありませんか。せっかくアラン殿が王子ののぞみを叶えてやろうとおっしゃっているのですよ。素直に受け止めてもよいのではないでしょうか」
側近がいう。
「まあ考えておくよ。それよりもシャルマン国への私札の準備だな。今回はだれがいっしょに来ることになっている?」
「はい。今回はアキナオどのとその部下が2名ほどつくそうです。それと王子のご友人より付き添いたいと申し出があったおります」
「そうか。了解した。さて2週間後が楽しみだ。いったいどんな冒険者と出会い得るのだろうか。なによりも例の鍵師と会えるのは本当に楽しみでならない」
「そうですか。王子にとって良き旅であらんことをお祈りしております」
「ありがとう」
ティラシェイドは側近にそういうと窓の外を眺めた。
「良い天気だ。大会も良い天気だといいなあ」
ティラシェイドのみる空はどこまでも青かった。
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