ドラゴンの連れた鍵師と仲間たちは大会への参加を決める2

 アレクサンドロスという名前の猫の新局長が去るとようやく静けさを取り戻した。


「なんだったんでしょうか?」


「ただの猫だ」


「うん、ただのあほな猫」


「あんたらそんなこといってるとまた蹴り飛ばされるわよ」


 キイたち男三人の会話にアイシアが頭を抱えこみ、ペルセレムはただキョトンとしている。


「見てきたよおおお」


 すると大会についてのポスターを詳しく確認しに行っていたリデルが戻ってきた。


「リデル。どうだった?」


 リデルはキイの頭の上に乗る。


「うん、2週間後に大会があるみたいだよ」


「内容も書いてあったの?」


 アイシアが尋ねるとリデルは頭を縦にふる。


「書いてあるとおりにいうよ。えっと、“諸君いままでの冒険の成果を十分に発揮するにゃー。危機一髪で乗り越えて、あらゆる秘密の扉を開くにゃー。そうすれば、素敵な宝物ゲットできるはずにゃー”だってさ」


 一瞬キイたちは目が点になった。


 脳裏には先程までキイの頭に蹴りを入れてきた猫所長がニャンニャン言っている姿が浮かぶ。


「えっと、ようするになに?」


「ようするに大会に参加してがんばったらなにかもらえるってことかしら?」


 アイシアがいうとそれだよとキイも同意する。


「つうかさあ、危機一髪で乗り越えろって言葉おかしくねえ? この世界ではそういう使い方するのか?」


 ムメイジンは腕を組みながら考え込む。


「さあ? どうなんでしょうね」


 ショセイも首を傾げる。


「それどうでもよくないか? あのアホ猫が考えたんだろう? 気にしないでよし!」 


「たしかにキイの言う通りかもな」


「それよりも大会に参加するかどうかでしょ。皆参加するってことでいいのかしら?」


 アイシアが仲間たちの様子を見回す。


 ムメイジンは当然だと言わんばかりに意気揚々とした顔をしているが、それ以外は迷っていた。


「アイシアはどうする?」


「私はやるつもりよ。別に優勝する必要はないし、ただ完走すればいいんでしょ」


 たしかにそうだ。


 もちろん大会なのだから順位はつく。完走するだけでもそれなりに報酬はもらえるのだが、順位が上へ行くほどにその報酬も高額になるシステムなのだから参加するならやはり上位に食い込みたいものだ。逆を言えば、もしもビリだったりしたら恥ずかしい。


「まあ、どうせ俺達はビリケツだから恥じる必要もないからねえ」


「それいうなよ! ジン!」


「そうですよ! もしかしたらいいところまで行くかもしれませんよ! 僕たちだって少しずつですがレベルは上がってます」


「じゃあ、結局お前らも参加するんだな。やる気満々じゃん」


 ムメイジンの言葉でキイたちは何も言えなくなった。


「あのお」


 ペルセレムが恐る恐る手を上げた。


「私は参加します」


「まじで?」


「はい」


「よし! そうこなきゃな! あとはキイとショセイだけだぜ」


 キイとショセイはお互いに見合わせた。


「僕も参加するよ」


「俺だけ参加しないわけにはいかないじゃん! 参加するよ」


「よし! それじゃあ決まりだな! みんな参加するぞ! おー」


 ムメイジンはひとりテンションをあげるのであった。


 

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