ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く14
トンガリ屋根の家へ飛び込むと同時に扉がバタンと音を立ててしまう。
その直後、ブラックドラゴンが家に体当りしているらしく、バンバンと壁が壊されるのではないかと思えるほどの揺れが起こった。
ほどなくして音がやみ、ブラックドラゴンの鳴き声が遠のいていくのが聞こえてくる。
一番最後に家へ入ったムメイジンが窓から外を覗き込むとブラックドラゴンの姿はまったくなくなっていた。
「どっかいったみたいだ」
ムメイジンの言葉に皆が胸をなでおろし、座り込むものもいた。
「危なかったね」
すると家の奥からまだ若い男性の声がした。
キイたちが振り返るとそこにはランプと一冊の本を手にもつ断線が暖炉の前に立っていた。
「ピノキオ?」
男性の様子を見たムメイジンが思わずつぶやく。彼は緑色のとんがり帽子をかぶっており、鼻は普通ではありえないほど高い。まんまるした目に全体期にやせ細った体は小麦色に焼けている。焦げ茶色の髪はボサボサで小汚い服は彼がズボラなことを示している。
「間一髪だった。ありがとう」
アレックスがそう声をかけると“ピノキオ”はアレックスをしばらくじっと見つめていた。やがてニッコリと笑顔を浮かべると「どういたしまして」と返答した。
「最近ブラックドラゴンの活動が活発なんだよ。だから、この森からは早く立ち去ったほうが懸命だよ」
そういいながら、“ピノキオ”はランプをテープルの上に置くと暖炉に火を付ける。
「でもいま出ていくのは危険だからお茶でも飲んでいきなさい」
“ピノキオ”はキイたちを見回すと奥にある扉の中へと消えていく。
さほどと時間をかけずに左手に人数分のカップを乗せたお盆を持って出てくる。テーブルにカップを並べるとどこからともなく出現したポットから液体が注がれる。
「なんかすごい好い香り!なんだ? これ? コーヒーか?」
ムメイジンが尋ねる。
「ココ茶だな。つうかコーヒーってなんだ? お前のいた世界の飲み物?」
「そう! うまいんだぜ!」
ムメイジンがキイを指さしながら応える。
「それよりもあなたはなぜ本をもったままなんですか?」
ショセイの言葉でキイたちも“ピノキオ”が本を右手に持ちっぱなしであることに気づいた。
「それをいうならば、君も持っているじゃないか?」
“ピノキオ”はいつの間にか出てきたスポンジケーキを左手で人数分切っている。
「僕も常時もってるけど、他のことをするときはちゃんと本は置くよ。君のようにずっと持ちっぱなしじゃない」
「へえ。そうなんだ。ぼくはね。持ってないといえないのさ。どんなときも本を持たないとだめなんだ。だから、寝るときも用を足すときも持っているのさ」
そういいながら、本を見せびらかすかのように高く上げる。
「あああああ!」
その本の表紙を見た瞬間にエルフのマーリーが声を上げる。
「その本! 先日マーリーがなくした本じゃない!?」
マーリーは“ピノキオ”から本を奪い取るとマジマジと本を見る。
「ちょっと!きみ! ぼくの本を勝手に取らないでよ」
「これはマーリーのだよ! ここにちゃんと名前が書いてあるわ!」
そう言いながら、表紙裏に書かれた文字を見せる。
たしかにそこには“マーリー”という文字が書かれていた。
「まてよ! もしかして!」
それを見ていたキイが突然奥の扉の方へと駆けよってドアノブを掴む。
「きみ!」
ドアノブは回らない。
鍵をかけられているようだ。
「ビンゴかな! セキュラ!」
キイが呪文を唱えると扉がいとも簡単にあいた。
「え? 鍵師!?」
“ピノキオ”の声を尻目にキイが中へと入っていく。その後を“史上最弱”メンバーが続く。
中へ入った5人が目にしたのは無造作に置かれた本の山だった。
「あっ!」
ショセイがある一箇所の区域へと駆け寄った。
「どうした? ショセイ」
「ここにある本はヒストリアの店でしか扱っていない本ばかりだよ」
「ということはあいつがブックトラップか」
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