ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く9
「まってろ! すぐに助けてやる」
満身創痍になったうえに蔓で締め上げられたキイたちはもう死ぬんだと諦めかけたとき、どこかで聞いたような声が飛び込んでくる。
はたしてどこで聞いたのだろうか。
つい最近のことだったように思える。
半分意識が失いかけていたキイは妙に冷静に分析していると、突如身動き一つ取れなかったはずの体が突如身軽になった。
「うわっ!」
解放された体はそのまま地面に落とされた。
「いてえ」
地面に転がっていた小さな石ころが無数転がっていたゆえに尻に痛みが走る。すぐさま腰を上げてふらふらと立ち上がると、穴の上にはアイシアたちとは違う無数の人間が覗き込んでいるのが見えた。
「大丈夫か?」
逆行ではっきりとは見えないが声には聞き覚えがある。
つい先程出逢ったピエロの男だ。
「おまえ、サーカスにいたやつか?」
「そうだよ」
キイの質問に答えながらピエロの男が手を伸ばす。
すると、男の顔がはっきりと見えた。もうすでにピエロの化粧はしていない。そこにはキイと同世代の少年がいた。
「さあ。はやく穴からでたほうがいい。またプランクヴァインがくるよ」
「は? プランクヴァイン!?」
キイとショセイが慌てて差し伸ばされた手を取ると引き上げてもらい、ムメイジンだけがキョトンとその場に立ち尽くしていた。
「何やってんだよ! ジン! はやく上がってこいよ。プランクヴァインだぞ!」
「はあ? なんだよ。それ」
「いいから早くあがれよ」
キイが手を伸ばした瞬間、ムメイジンの足元からまた蔓が伸びてきた。
「うわうわ!」
するとキイのすぐ横をだれかが通り過ぎていく。穴の中へと降りるとムメイジンを絡め取てきた蔓をすべて切り落とす。
「うわうわ」
ムメイジンの体は抱え上げられてそのまま穴からは飛び出していき、地面に着地する。その勢いでムメイジンの体は背中ごと打ち付けてしまう。
「あっ、悪い。勢いつきすぎた」
「悪いじゃねえ!! 痛いじゃん!」
ムメイジンが怒鳴りつける。
「まったくもう。もう少し要領よくできないのかねえ。うちのリーダーは」
キイを引き上げてくれたピエロの男があきれたようにいう。
キイはピエロの男からムメイジンを助けてくれた男の方をみた。
男が振り返る。
「あれ? 久しぶりだな」
「はい?」
会ったこともない相手に言われたと思いキイがキョトンとする。
「本当にひさしぶりね。アレックス」
キイのすぐ後ろにいたアイシアの声が聞こえてきて振り返った。すると、アイシアが目を細めながら男を見ている。
「えつ?」
キイが再び男を見る。
「そんなに嫌そうな顔をするなアイシア」
「別に」
あきらかに不愉快な顔をするアイシアに対してアレックスと呼ばれた男は嬉しそうな顔をしている。
「え? 知り合い?」
キイはただ呆然とした。
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