ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く8

「大変だあ! いま助ける」


 蔓の触手に捕まったキイたちを助けるべくしてムメキジンが剣を構えながら穴の中へと飛び込む。そのまま剣をふるい蔓を切り裂こうとする。


「げっ! 全然切れないじゃん!」


 蔓には傷一つ付かず、剣に絡みついてくる。


「うわうわ」


 ムメイジンは慌てて剣を離すと穴から這い出でようとする。それを逃すまいと蔓がムメイジンの足にからみつくとそのままキイたちのもとへと引き寄せられる。


「ジン!助けるんじゃないのかよ!」


「そのつもりだったんだけど、こいつは手強くてさあ」


「違うわよ。あんたらが弱いだけ」


 穴の上にいるアイシアがため息交じりに言う。


「アイシア、そんたこという前に助けろよ。身動きがとれねえよ」


「ほええ、たったすけないとですうう! ファッファイヤー」


 アイシアの横でペルセレムが呪文を唱えながら杖を蔓の方へと振るう。すると杖から炎が吹き出し、蔓を燃やすべかしてむかう。かと思いきや、炎はポンという音とともに消失した。


「ひええ!また失敗ですうう」


「じゃあ。僕が炎出す!」


 いつの間にか穴から抜け出していたリデルが口から炎を出そうとする。


「やっやめろおお!それはまずい」


 キイが焦ると、リデルが口を閉じて怪訝そうに首をひねる。


「なんで? なんで? せっかく助けようとしたのにさ」


 リデルがパタパタと羽をさせながら尋ねる。


「どうもこうもない! 忘れたとは言わせないぞ!」


「なんのこと?」


「おまえ、マンダラの森燃やしただろうが!」


 マンダラの森とはキイのふるさとであるカイドウの村にあった森であり、リデルのふるさとでもあった。生まれて間もなかったリデルはとある理由から炎をだして森一体を燃やし尽くしてしまったのだ。それゆえにその森はいまはなく平べったい土地へと変わっている。


「そうだった。でも、あの頃とは違うぞ。今度はちゃんと手加減できる」


「どうだか」


「どうでもいいけど、はやくこの蔓どうにかしてください! もう痛くていたくてたまりません!」


「ああもう。仕方ないわ」


 アイシアは背中に背負っていた弓を構える。


「うわうわ、それもやめろ!」


 キイ、ショセイ、ムメイジンが同時に声を上げた。


「なによ! どういう意味よ」


「だっておまえ」


「ものすごくコントロール悪いじゃん」


 その瞬間、弓が飛んできてキイの頬をかすめる。


「助かりたいんでしょ! だったら、じっとしてやさい」


「ひいい」


 直後弓矢が次から次へと飛んでくる。そのたびに男3人はギリギリのところでかわそうとするのだが、蔓が邪魔してうまくかわせず、衣類に矢の先がつきささる。


「はええ! ムメイジンさんたち死にますうう」


 それを見ていたペルセレムがアイシアを止めた。


「なによ」


「だってええ、傷だらけですよ」


 そういわれてアイシアがキイたちをみると見事に傷だらけになっている。


「ごめんなさい」


 アイシアは素直に謝った。


「ごめんじゃねえよ。まじ痛え。うわ」



「ぎゃあああああ!!」


 アイシアの弓のせいで傷だらけだというのにまた蔓が締め付けてくるものだから死ぬほどの痛みでキイたちが断末魔の叫びをあげたのはいうまでもない。

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