ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く7
いつもより豪華な食事を終えたキイたちは早速山の中へと入ることにした。
この山には正式な名前がない。
かつてあったのかもしれないが誰もその名を知らないがゆえにアメシスト国とシャルマン国では呼び方が違っていた。
ちなみにシャルマン国では「フロンティアマウンテン」と呼ばれているのだが、アメシストの東の街にフロンティアと呼ばれる街があるために別の呼び名をつけられている。
「よし、気合い入れていくぞ!」
ムメイジンの言葉を合図にフロンティアマウンテンへと入っていく。一歩中へ入るといっきに光が遮られ薄暗い道がしばらく続いている。ときおり聞こえるのは野生動物たちの生命の声。その声にペルセレムが不安げに振り向く。他のメンバーたちはただひたすら真っすぐに進むものだから、ペルセレムは自然と遅れて歩くことになる。するとムメイジンが遅いぞとペルセレムのほうへと戻ってくるなり、腕をつかんで強引に引っ張り歩かせた。
「ほええ。そっそんなに引っ張らないでください!歩けますからあ」
「だったら、よそ見しないで歩け」
「ひいいり。ムメイジンさん怖いですう」
ペルセレムは目を緩ませた。
「いやっ俺は泣かせたいわけじゃねえよ。ほらっ、
よそ見ばかりしてると危ないからさ」
ムメイジンが慌てる。
「なんかいい感じじゃねえの?」
「そう?」
キイの言葉にアイシアは首を傾げ、キイの肩の上にいるリデルが楽しそうに笑っている。
ただショセイだけがそんなやり取りをしている仲間たちのことなど見ようともせずにひたすら目的地へと進む。
ショセイはパーティの中で最年長だが一番小柄だ。大概本ばかり読んでいるから体力もあるほうではないのだが、その足取りはいつになく早い。
「ショセイ! ひとりで突っ走るなよ!」
ひとり先へと進むショセイに気づいたキイが話しかけるもまったく聞いていない。
するとふいにショセイがキイたちの目の前から消えた。
「え? ショッ、ショセイ!?」
キイたちが慌てたのはいうまでもない。
すぐさま先程までショセイのいた場所へと駆け寄る。
「いたた」
すると地面に大きな穴が空いており、その中で座り込んで痛がっているショセイの姿が見えた。
「ショセイ! お前なにやってんだよ」
「落ちたんですよ! 落とし穴です! 見てないで助けてくださいよ。キイ」
「はいはい」
キイはすぐに腰をおろして立ち上がって手を伸ばすショセイを掴み取り、引き上げようとする。
しかし、逆にキイのほうが引っ張られ、穴に落ちて顔をぶつける。
「いてて。なにするんだよ!」
ジンジンする鼻をさすりながら、ショセイを睨みつける。
「違う! 違う! 僕じゃないよ! 足元見て!」
そう言われて足元をみると、ショセイの足に蔦が巻きついているではないか。
これが穴から出るのを妨げたらしい。
「なんだよ。蔦か」
キイがショセイに絡みついている蔦を離そうと触れようとした瞬間、蔦が動き出しキイの腕に登ってくるではないか。
キイは腕をブンブンと振り蔦を切り離そうとするがそれよりも速い速度でキイの体全身に巻きついてくるではないか。
「うわわわわ!」
蔦に捕らえられたキイとショセイは悲鳴を上げた。
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