ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く10

 冒険者は基本的にパーティをくんで行動することになっている。パーティ名はある程度ランクが上になれば、自由に決めて良いのだが、ランクがもっとも低いまだ成り立てホヤホヤのパーティーには、ギルド側からパーティー名が提供されることになっているのだ。


 いわゆる仮のパーティということになる。


 ただそのギルドから提供されたパーティ名というものは正直いってだれもが納得いくものではない。いやむしろ、それはないだろうというものが多く、早くレベルをあげて改名しようとする冒険者は少なくない。


 もちろんキイたちも改名するつもりだ。


「史上最弱」などと聞いただけで頼りなさそうなネーミングをいつまでも名乗るつもりはない。早くランクをあげたいものだ。


 だが、冒険者ランキング連続1位のランクはSSだというそのパーティはなぜか冒険者を始めた頃から同じ名前を使用している。


 縁起のよい名前ならよい。


 しかし彼らが名乗っているパーティ名というのは「アンラッキー」だというあまりよろしくないネーミングだった。

 

 そのアンラッキーとかいうランキング1位のパーティとキイたちはいっしよに行動している。


 アンラッキーは7人のパーティでキイたちは5人と一匹。


 十二人もの人数がいままさに道なき道を歩いている最中なのだ。


 道幅が狭いゆえに自然と2列で歩くことになる。


 キイの隣にはショセイがおり、その後ろにはムメイジンとペルセレム。


 そして、キイの前をあるくのはアンラッキーのメンバーとアイシアだった。


 アイシアはなぜか知り合いらしい男とともに歩いている。


「元気か?」


「元気よ」


「まさかここであるとはな」


「そうね」


 親しく話しかけている男に対してアイシアは無愛想に返答している。


 いったいどういう関係なのだろうか。


 それには答えることなく、ただ男たちがなにもかの紹介をしてくれただけだった。


 ちなみにいまアイシアと一緒に歩いている男はこのパーティのリーダーをしているアレックス。


 ピエロの格好をしてサーカスに参加していた人物がライアン。


 ライアンといっしょにサーカスに参加してきたレオタードの女性がラン。


 あとは図体のでかいガルド。


 エルフのマーリー


 魔法使いのアクエリア


 細身の剣士のソーン


 そんなところだ。


 あとの詳しいことはよくわからないが彼らがこのシャルマン国の冒険者ギルドで1位の実力をもつ人物らしい。


 そんな彼らとともに行動することになったのは単純に目的地が同じだからだ。


 キイたちは本泥棒から本を取り返しにいくのだが、アレックスたちは本泥棒のいるという地点よりも先にあるダンジョンを攻略するために向かっている最中ということらしい。


 そういうわけで途中まで一緒にいくことになったのだが、キイの心はどうも穏やかではない。


 さっきからモヤモヤが消えないのだ。


「なあ、アイシア」


 キイが口を開くと、アイシアとアレックスが振りかえる。


「それよりあんたらってどんな関係なんだ?」


「どんな関係って私達は……」


「うわっ!」


 アイシアが言いかけると突然前方を歩いていたソーンの悲鳴が聞こえてきた。



「どうした?」


 前方を見るとサボテンの姿をした妖魔が何匹もこちらへ突進してきたのだ。














 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る