ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く5

「ここにいるのか? そのブックトラップというやつ」


「そうみたいよ」


 キイの質問にスマホの地図を見ながらアイシアは応えた。


 ギルドを出て首都ステラから東へ向かったキイたちはとある山の麓にいた。その山を越えれば、隣国アメシスト王国がある。時間として首都ステラから半日ほど歩いた場所にあるのどかな村だ。そこの山に本を大量に盗んだというブックトラップなるものがいるらしい。



「なんかずいぶん遠くまできたね」


 リデルがキイの頭の上を飛びながら沈みかけている太陽をみる。その隣には腹減ったと座り込むムメイジン。


「本当に遠くまできましたよね。でも、この山に犯人がいるんですよ。絶対につかまえてやりましょう!」

 

 いつになく張り切るショセイ。


「あの……あの……お山を超えたら……きゃあ」


 なぜか興奮するベルセレムは顔を真っ赤にしながらニヤニヤ笑いながら、腰をくねくねさせている。


 そんな彼らの様子を見ながらアイシアは再度地図を確認する。


 それにはいまキイたちがいる山の頂上付近にいることをしめす点滅が表示されており、そこへ向かうルートを示している。


「頂上だとアメシスト領地内にならないか?」



「うーん。どうかなあ? 山頂はかなり国境が曖昧だもん。それにアメシスト領土内に少し入ったからって咎められないわよ。基本的にアメシストとシャルマンの出入りって自由だし、よほどのことがない限り国境警備隊に捕まったりしないわ」


「そうなのか?」


 ムメイジンが尋ねる。


「アメシスト国とは国交結んでいるから、他の国よりはかなりゆるいのよ。ちなみに西の隣国カーラとは犬猿の仲だから出入りはかなり制限されているわね」


「へえ」


「ってムメイジン、全然わかってねえだろう」


「うん、まったく。俺、いちばん苦手な科目は社会だから」


 キイのツッコミにムメイジンはニコニコと笑顔を浮かべながら答える。そんなに自慢げにいうことなのかと目を細めながらもキイはムメイジンからアイシアのほうへと視線を移した。


「とりあえず、山に入りま……」


「まったあああ!」



 山へと踏み込もうとしたとき、ムメイジンが大声を張り上げた。


「どうした?」


「その前に飯にしねえ? 俺腹減って死にそう」


 グルグルグル


「ほええ!」


 するとムメイジンではなくペルセレムの腹の虫がなった。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


 みんなの視線が自分に集中するとペルセレムは何度も頭を下げて謝る。


「別にいいわよ。そんなに謝らないでよ。そうよね。わたしもお腹ペコペコ。ご飯食べてからにしましょ」


 アイシアは戸惑いながらもそういうと、ペルセレムは「はい!」と元気よく返事をした。


 

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