ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く3
そういうわけで、キイたちはひとまず今回の冒険を終わらせるといつも利用している宿所へ戻ると、ほかのメンバーに本泥棒の件を話すことにした。
「はあ? 本泥棒を探す? そんなの何のお金にもならないわよ」
難色を示したのはアイシアだ。
「でも、ヒストリアさんはレベルアップするし、報酬をたくさんくれるといってたんだよ」
「そうだ。そうだ。俺も聞いたぞ」
ショセイの言葉にキイが同意する。
「そんなわけないじゃないの。 冒険者のルールわかっているの? 冒険者はギルドを通してしか依頼受けちゃいけないのよ。ギルド通さずに報酬受けたら、ランク落とされるし没収されるのよ」
「それって報告した場合だろ? バレなきゃよくねえ?」
ムメイジンが食事をしながら横槍をする。
「バレるわよ。冒険者もばかじゃないわ。もしも、報告してないことを発覚したら冒険者の権利の剥奪、悪ければ逮捕よ」
「うーん。なんか以外と冒険者はめんどくさいんだなあ。だれなそんなルールを決めたわけ?」
「知らないわよ。っていうか、ムメイジン。あなたは御飯食べるかしゃべるかどっちにしてよ」
アイシアがムメイジンを睨みつける。
「いいじゃん。有名なクライシスハンターも食べながらしゃべるらしいぞ」
そういってまたご飯を口に運ぶ。
「はあ? 有名なクライシスハンターにそんなひときないわよ。どこ情報?」
「ペルセレムがいってた」
ムメイジンに名指しされたペルセレムは真っ青な顔で狼狽える。
「ペルセレム! なに教えているのよ」
「いえ、その……。だって……」
ペルセレムは泣きそうな顔をする。
「ところでクライシスハンターってなんだ?」
ムメイジンの質問に一同が振り向いたのはいうまでもない。しばらくの沈黙の後にショセイが口を開く。
「隣国アメシスト王国が設立した魔法騎士団にある部署のひとつです。魔法騎士団でも、もっともすぐれた人たちが所属していて、このアウルティア大陸でもっとも危険とさせる魔王の残党絡みの事件を扱う部署ですよ」
「魔王の残党? なんじゃそりゃ」
「昔この世界を破壊させようとした人のことです」
「そんなことどうでもいいわ!」
そこでアイシアがばっさりと話を切った。
「アイシア。なぜそこで切る? これから面白そうな話が聞けると思ったのにサア」
ムメイジンがムッとする。
「聞けるわけ無いじゃん。私達は会ったこともないのよ。それよりも本泥棒の話よ。私は反対よ。なんのメリットもないわ。それよりももっとたくさんの依頼を受けてレベルを上げるのが先よ」
アイシアの『会ったことない』という言葉にペルセレムは『会ったことありますけど』とつぶやくと声が小さすぎてだれにも聞こえていない。ただムメイジンのみがなにかいったかと振り向いただけだ。ペルセレムは何でもないと首をふる。
「そんなことない! 本をくれるっていうし、メリットが大きいよ!」
「それはあんただけでしよ」
アイシアのいうことは正論だとキイは思わず頷く。
「ようするに正式な依頼にすればいいのね」
そのとき、入口の方から聞き慣れない声がして振り返る。すると、そこにはヒストリアの姿があった。
「こんにちわ。勝手にあがらせてもらいました」
驚くキイたちにヒストリアは丁寧に頭を下げた。
「ヒストリアさん。どうしてここへ?」
ショセイが尋ねる。
「ギルドに聞いたのよ。そしたら、ここの宿所を教えてくれたわ。ついでに今回の件をギルドに依頼したの。すると以外と早く受理してくれたわ。だから、改めてお願いにあがったの。どうか、盗まれた本を取り戻してください。『史上最弱』さん」
そういってニッコリと笑うヒストリアの発したパーティ名に一同は困惑した。
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