ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く2
「本が盗まれた?」
キイは再び聞き返した。
「言葉のとおりよ。見てもらったほうが早いわ。入って」
そういいながら、本屋の店員は店のドアを開ける。
中へ入ると本棚が並んであるのだが、本が一つもなくなっている。
「ここにある本をすべて盗まれてしまったのよ」
彼女がいった。
「ええええ! 本当に!?」
シヨセイは声を上げ、キイはピンときてない様子で空になった本棚を見渡す。
「本当よ。閉店するからって片付けたわけじゃないわ。朝起きたらなにもかもなくなっていて、こんなメモが残されていたの」
そういって彼女は一枚のメモをキイたちに見せる。
そこには一言「本は頂きました。ブックトラップ」と書かれていた。
「ブックトラップ?」
聞き慣れない言葉にキイは彼女の方を見る。
「名前のとおりよ。本を好む正体不明の人物よ。私達の業界ではよく知られている名前でもあるし、ブックトラップには気をつけるようにという通達もきていたわ。だから、本を盗られない鍵をかけてたんだけど」
「鍵?」
その言葉をきいてキイは本棚をじっと見つめる。
「たしかに鍵かかっていたみたいだな。痕跡がある。でも、その鍵を破って奪い取ったわけなのか?」
「ええ。凄腕の鍵師にお願いしたんだけど、簡単に破られたみたいなのよ」
「簡単じゃねえよ」
キイはそういいながら本棚を触る。
「結構複雑な鍵をかけてたみたいだぞ」
「えっ?」
本屋の店員は怪訝な顔をする。
「キイは鍵師なんだよ。だから、わかるんじゃないかな」
ショセイはそう説明すると彼女はなるほどと納得する。
キイはしばらく本棚を凝視する。
「なあ、その鍵師ってこの街の鍵師なのか?」
「ええ、ここからサムナン通りをまっすぐいった突き当たりにある店よ」
「なるほどね。とりあえず、そこにいってみるか。なにか手がかりがあるかもしれねえ」
「それって、引き受けてくれるということ?」
「こいつはやる気満々だぞ。とりあえずいってみると」
そのとき、キイの着ている服から音が鳴り始める。
「あっ」
キイは慌てて上着についているポケットからスマホを取り出した。
その直後、鬼の形相のような顔をしたアイシアの姿がスマホ画面に浮かび上がる。
「キイ! シヨセイ! もう冒険にいく時間よ!」
「げっ」
「ゲッじゃない! 早く戻ってらっしゃい」
そういって、アイシアの顔が画面からぷつりと消えた。
「もしかして冒険へいくところだったの?」
「そういうことだ」
「ごめんなさい」
「いいよ。今回の冒険終わってからでもよければ引き受けるよ」
「ありがとう! お願いします」
彼女は深々と頭を下げた。
「そういえば名前は?」
キイはスマホをポケットに入れながら尋ねる。
「ヒストリアといいます」
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