ドラゴンを連れた鍵師と読書家は本を探しに行く1
「あああああ!」
「どうした!? ショセイ!?」
これから冒険へいこうと準備をしていると突然ショセイが絶叫した。どうしたのだろうとキイたちが尋ねる声さえも聞こえない風に本をあちらこちらへと散らかし始めたのだ。
本をあんなふうに散乱させるなんてショセイらしくない。
「おい! ショセイ! 」
キイが肩を掴むとショセイは体をビクッとさせると真っ青な顔をして振り返った。
「ないんだ」
「はい?」
「僕の大切な本がないんだーーー!」
「本?」
キイたちは床に散らばった無数の本を見回す。
あまりにたくさんありすぎて、どれがどれなのかわからない。いったい何の本を探しているのだろうとキイたちが再びショセイをみると、なにやら考え込んでいた。
やがて何か思い立ったようにポンと手のひらを叩く。
「あっ、そうだった。まだ買ってなかったんだ! ちょっと本屋で買ってくる」
そういって、ショセイは慌てて出ていってしまった。
「……っておい! 冒険はどうするんだよ! せっかく高収入な依頼はいってんのにさ!」
茫然としていたキイは我に返るとショセイを追いかけた。
パーティー「史上最弱」のアジトとしている安い宿をでたショセイは本屋へ向かうことにした。本屋は宿からさほど離れていない場所にあったはずなのだがどうもみつからない。
道に迷うには一本道なので間違いようがない。
「うーん。たしかここにあったんだけどなあ」
ショセイは首をかしげながら、本屋だったはずの建物を見る。そこには本屋「ラビット」と書かれていたはずの看板にはなにも書かれていなかった。
「ショセイ!」
ショセイが振り替えるとキイが駆け寄ってきていた。
「キイ」
「お前なあ、本なら冒険のあとでも買えるじゃねえかよ」
「そうはいかないよ。いま買いたいんだよ」
「なんでだ?」
「いまじゃないとだめなんだよ。だから、本屋にきたのにさ」
そういいながら、ショセイはなにもかかれていない看板を見上げる。
「確かここ本屋だっだはずなんだけどなあ」
「ここ?」
キイもまた彼のみている建物を見る。
そこには看板はない、いやなにもないのだ。
店をやっている気配もしない。
「昨日、閉めたのよ」
すると、後ろから声が聞こえてきた。
振り替えるとそこには一人の少女がいた。
「君は?」
ショセイが尋ねる。
「私はここの本屋の店員だったものよ。いろいろ事情があって閉めることになったのよ」
「えええ!? じゃあ、本はもうないんですか?」
「ないわ」
「えええ?」
ショセイはその言葉を聞いて地面に座り込んでしまった。
「ショセイ。そんなにがっかりするなよ。今回の冒険が終わったら、一緒に探してやるから戻ろうぜ」
キイが言うも、まったく納得いっていない顔を向けながら渋々立ち上がる。
「あら、あなたたち冒険者?」
「そうだけど?」
キイがそう答えると、少女が食い入るようにキイたちを見た。
「冒険者なら、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「そう。もしもお願いを聞いてくれたら、あなたたちが望む本をあげるわ」
「え! 本当!」
ショセイが食いついたのは言うまでもない。
「本当に僕の望む本をくれるんですか!?」
「もちろんよ」
「やったあああ。受けます。受けますとも」」
「おい。勝手に決めるなよ」
キイのことなど忘れたかのように、ショセイは少女の両手をつかみながら、
「僕頑張りますから!」
と目を輝かせながらいった。
それには少女も苦笑する。
「こら! ショセイ。勝手に決めるなよ」
キイはショセイの襟足をつかんで少女から離す。
「報酬もたっぷりあげるわ。この依頼を成功させたら、レベルがぐーんとアップするかもね」
「まじで!?」
今度はキイのほうが食いついてきた。
「それで、どんな依頼?」
「本を取り戻してほしいの」
「はい?」
「本よ。本が盗まれたのよ。だから、閉店にしないといけなくなったのよ」
少女のいっている意味がわからずにキイもショセイも首をかしげた。
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