ドラゴンを連れた鍵師は真っ白な世界で対峙する2

真っ白な世界へと変わったのと同時にさっきまでいたピエロの姿も見えなくなっていた。ゆえにキイは仲間の名前を叫んだりしながら歩いてみたものの一向に出口がみえるわけでも、景色が変わるわけでもなかったのだ。


動いても無駄だと悟り、座り込んだキイはしばらく回想をめぐらせたわけである。


「くそっ! なんだよ! そこ!」


キイは頭をくしゃくしゃにすると立ち上がった。


「おい! だれかいないのか!? こらああ!ピエロの格好のやつでてこーい!」


「はーい!」


そう叫ぶと突然真っ白な空間からにょろりとピエロの顔が目の前に出現した。


「うわっ!」


驚きのあまり、キイは座り込んでしまう。


そのうちにピエロは全身を露にして愉快そうに笑い始める。


「なっ! なんだよ!? ここは!?」


「クスクス」


「笑ってないで答えろ! ここはどこだ!?」


「そうわめかないでよ。鍵師さん。ここは……うーん、とりあえず、僕の世界とでもいっておこうかな」


「はい?」


キイは何をいっているのかわからずにくびをかしげる。


「それはいいとして」


「よくねえ! とにかく俺を元いた場所に戻せよ」


「もちろん。ちゃんと帰してあげるよ。その前に君と話がしたいんだよ」


「はあ? 話? そんなの聞いてる時間がないんだよ。さっさと帰せ!」


「だいじょーぶ。そんなに時間はかからないよ」


「本当か?」


「本当だとも」


「わかった。でも手短にしてくれよ」


「もちろんだ」


 それからピエロはキイに話をした。その話はキイにとっては首をかしげるものばかりではっきりと理解できるものではなかった。その様子をみていたピエロがクスクスと愉快しうに笑う。


「君には難しかったね。じゃあ、君に分かりやすくいうよ。あのね」


最後にピエロがなにかを告げた直後、真っ白な世界が一気に色づいていき見覚えのある光景が広がった。


「あれ?」


キイが周囲を見回すもピエロの姿はどこにもなかった。


「さーて、ピエロのお出ましです!みなさま、ピエロの演技をお楽しみください」


ただ表通りの広場からそんなアナウンスとともに声援が聞こえるだけだ。


もしかしたらとキイはサーカスが行われているテントへと向かう。


テントのなかではピエロが演技を披露している。


「あれじゃねえ」



遠くではっきりとは見えなかったのだが、キイにはそう思えた。


あれではない。


あのピエロではない。


「あれ?」


そのとき、キイは首をかしげる。


ピエロとなにかを話していた気がするが思い出せないのだ。


ものすごく大切な話だったような気がするのにピエロの笑い声以外はまったく思いだせない。


「本当はたいしたこたなかったのか? いやただの夢だったのかなあ?」


そんなことを考えているといつのまにかピエロの演技が終わっていた。


 




 

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