ドラゴンを連れた鍵師は真っ白な世界で対峙する1
「あれ? ここどこ?」
キイが目を覚ますとそこはなにもない真っ白な世界だった。
「リデルうー。アイシアー。ショセイー、ムメイジンー、ペルセレムー」
とりあえず、パーティーの仲間たちの名前を呼んでみるもだれからの返事もない。とりあえず、歩いてみようかと前へ進んでいくも、右も左も真っ白で進んでいるのかもわからない。実際はさほど経っていないのかもしれないが、すごく時間が長く感じた。
「おーい! だれかいないのか? オーイ!」
叫んでみるが物音ひとつしない。
「くそっ! なんだよ。いったい」
キイは胡座をかいて座り込む。
しかしなぜこんなことになってしまったのだろうか。
キイは腕を組んだまま、これまでの経緯を思い浮かべた。
それは結構報酬のいい依頼を受けて、目的地へ向かうために準備をしているときだった。割りと遠出をするということもあって食料をなるべく多く買い出すことになったのだ。とはいっても、キイのパーティーはレベルが低いゆえに依頼報酬もさほどもらっているわけではない。ゆえにギリギリのお金でいかに食料金を調達するかの要になってくるわけだ。
そういう遣り繰りが得意ではないが、パーティーのなかでは上手いほうということでいつも買い出しに駆り出されるのはキイであった。
ゆえに安い店というものを知っている。
ただパーティーのアジトにしている宿屋からかなり離れていることが難点だ。
どうにか安く食料を調達したキイは宿屋に戻ることにした。
すると行きは人の気配すらしなかったはずの通りがいつの間にか人で溢れて混雑しはじめていた。
なんだろうと思いながら歩いていると群衆が広場のほうへ集まっていくのが見えた。
広場には大きなテントがたっており、その中へどこか楽しそうな顔をして人々が進んでいくのだ。
「はあ? こんなところにサーカス?」
確かさっきまでなかったような気がするなあと首をかしげる。
このまま広場を抜けて真っ直ぐ進めば宿屋にたどり着くのだが、あまりの群衆のせいで先へ進めそうにない。仕方なくキイは迂回することにした。
「こんにちわ」
しばらく来た道を戻り路地へと入ったところで急に誰かに話しかけられ、キイは立ち止まる。
声のする方へ振り返るとそこにはピエロの姿をした人間が立っていた。
「こんにちわ」
ピエロはもう一度あいさつする。
「俺にいってんの?」
周りにだれもいないことを確認したあと、キイは自分を指差しながら尋ねる。
ピエロは何度もうなずく。
「そう。きみだよ。きみ」
「俺に何のよう?」
「遊ぼう」
「はい?」
キイが首をかしげているとピエロはいつの間にか目の前にまで近づく。キイはぎょっとして仰け反った。
「遊ぼうよ。鍵師さん」
その言葉とともに突然キイの視界からすべての景色が消え去り真っ白な世界に変わってしまった。
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