父からの手紙2
「たく、いちいち“鍵”かけなくていいじゃん。父さんは」
「あははは。グレイスらしいよね。別に読まれて困るものでもないのにさあ」
父からの手紙を読み終えたキイが愚痴るとリデルがそうだよねえと頷く。
トゥーシーから受け取った『金貨十枚』とだけ書かれた父からの手紙には“鍵魔法”がかけられており、解除しないと読めないようになっていたのだ。
大したことは書かれていないだろうと思いながらも、キイは自室に戻ってから魔法を解除して手紙を読み始めた。
やはり当たり障りのない内容で、別に人にみられても構わないようなものだった。それでも魔法をかけてしまうのは父が“鍵師”であるゆえんだ。
現在父はキイの生まれ故郷でこじんまりと生活しているのだが、キイが生まれる前は王都で重要書類などに“鍵”をする仕事をしていたそうだ。どういういきさつで田舎の村で生活するようになったのかはしらない。ただそのときのくせなのだろう。手紙につい“鍵”をつけてしまうのだ。とくに息子への手紙には徹底して“鍵”をする。ゆえにキイが父からの手紙を読むたびに“鍵”を解除するのに苦労させられる。
今回は簡単に解除できたのだが、前回の手紙はものすごく凝った魔法を使ってあるがゆえに解除するまでに何時間もかかっている。
もういい加減にしてほしいものだ。
「そういえば、もうずいぶん帰ってないよね」
「そういえば、いまのパーティー組んでからはまったく連絡もしてなかったなあ」
『史上最弱』という名前をつけられてしまったパーティーが結成されてからどれくらいたったのだろうか。少なくとも数ヵ月はすぎている。それなのに相変わらずレベルアップがなかなかできず、お金に困ることが多かった。ゆえに田舎に里帰りするひまもなかった。
「なあ。キイ。一度帰るのか?」
「うーん。そうだなあ。もうすぐ祭りだし、久しぶりに参加するのもいいかもな」
父からもトゥーシーからも資金をもらったから、そのお礼とパーティーの仲間たちを紹介しておこうかなとキイは思った。
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