アイシアの日記
アウルティア歴1998年3月28日
その日は久しぶりにお金が多く入ったということで、好きなものを買うことになった。
わたしは最近パーティーの仲間入りしたばかりのペルセレムといっしょに街へ出掛けることにした。
ペルセレムは魔法使いだ。
シャルマン国とアメシスト王国の国境の街オセアンにある魔法中等学校を卒業したのちにギルドにて、魔法使いとして冒険者登録をしたらしい。その後、自分と組んでくれそうなパーティーを探していたらしいんだけど、なぜかうまく仲間になってくれる人が見つからずにさ迷っていたそうだ。
とりあえず、魔法道具だけでも購入しようとマナの街へやってきたのはいいけどお金は尽きてしまい、食べるものにも困ったあげくに空腹で倒れていたところで私たちと出会ったわけなの。
そこでムメイジンがパンをあげて仲間になってくれと誘うとあっさりと引き受けてくれて仲間になったわけだけど、あまりのあっけなさにキイが突っ込みをいれた。
それからギルドで仲間登録したんだけど、正直驚いた。
魔法使いがいるだけで相当パーティーレベルが上がるとされていたのに、結局はそんなにレベルが上がらなかったんだもん。
普通はレベル1から3ぐらいまで騰がるというのに結局は1のまんま。
それにはギルドの受付も驚くほどだった。
なぜそうなったのかというと、ペルセレムのレベルが低すぎたからなの。あれでよく魔法学校を卒業できたのかと疑われるぐらいだったわ。でも、ちゃんと卒業証明書をもっていたし、学校側での確認はとれていたから間違いなし。
なんだか、私たちのパーティーって「史上最弱」から逃れられない運命なのかしら。
だからといって、ペルセレムを追い出そうとする人なんていないわけで気づけば、一週間の月日が流れていたわ。
先日の冒険で少しは贅沢できるほどのお金をもらえたということで私たちはほんの少し贅沢をするために街へ繰り出したというわけ
たくさんお金があるとはいえ、本当に奇跡的にお金が入っただけで相変わらずわたしたちのパーティーは貧乏。
だから、贅沢とはいえども、使いすぎないように気を付けないといけない。
そんなふうにお金を計算せずに好きなだけ好きなものを買えるようになりたいわ。
いつかは「史上最弱でやくて」「史上最強」と呼ばれたいわ。
まあ、そういうことで、わたしたちは街へくりだし、さまざまな品物を見て回った。
そのなかで見つけたのが、いまわたしが書いている日記張だ。なんかみたこともないピンク色のお花の絵柄の描かれた表紙の日記帳でわたしは一目惚れしたわけ。
もう衝動的に購入したんだよね。
うーん、無駄遣いしてはいけない!
そう思っていながらも、その日記帳が呼ぶのよ。買ってくれ!
買ってくれ!
ってしつこいぐらいに誘うものだからつい手が伸びてしまった。
皆に怒られるかもしれない。
買ったことを秘密にしようかとも思ったわ。
でも、それができなかった。
なぜなら、その日記に書かれた花が気になったからだ。
みたことのないピンク色の花。
これはなんというのだろう?
気になって仕方なくて、日記帳を買ったことを隠すことができなかった。
私はパーティーの拠点としているボロアパートへ戻ると早速みんなに尋ねてみたわ。
だけど、ペルセレムもキイも知らなかった。物知りのショセイも首を捻るばかり。リデルは自信たっぷりに「ドラゴンが知るわけがない」っていうんだよ。
じゃあ、ムメイジンは?
知るわけないよね。記憶喪失だし
そう思いながらも、一か八か質問した。
すると、あっさりとそれは「さくら」だというのよ。
さくら?
聞いたことない名前だわ。
どこの国のものかしら?
そのことを聞くとムメイジンは自分の生まれ育った国に咲く花だと教えてくれたわ。
けど、ムメイジンって中途半端な記憶喪失なのね。
どこか覚えていて、どこか忘れている。
わたしは記憶喪失になったことないからわからないのだけどそういうものなのかしら?
まあいいわ。
そう。
この日記帳は「さくら」の花が表紙に描かれた本だったの。
本当にきれいなのよ。
絵で描かれただけでもきれいなのだから、
本物はもっときれいに違いないわ。
いつかムメイジンがいた世界にいってみたいと思った。
しかし、そのさくらのおかげか、日記帳を購入したことを咎めるものはだれひとりいなかった。ただこの日記帳はすごくいいものなのだと褒めてくれさえもした。
キイも「日記書くのか?」と尋ねたぐらいなもので「うん」というと「三日坊主」になるなよとからかうぐらいで済んでいる。
そういうわけで、これから日記帳にわたしたちの冒険を綴ろうかなと思うの。
これから、どんなことに出会うかわからないわ。
そうだわ。
「史上最弱パーティーが史上最強のパーティーにいたるまでの物語」なんてタイトルつけるのも素敵ね。
うふふ♥️
夢は大きくなくちゃね♥️
日記帳の最後のページが書き終わるまでに「最強」パーティーになれるようにがんばっていこう!
今日はここまで
わたしたちは大丈夫
きっと
だれよりも頼もしいパーティーになれるわ。
わたしはそう信じてる。
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