ドラゴンを連れた鍵師は今後について模索する2

 魔法使いがパーティーのなかに一人いる。


 その魔法使いがどれほどのレベルなのかにも関わらず、パーティーのレベルはいないパーティーに比べると2つか3つぐらい上がるらしい。なぜかというと、魔法使いというものはそれほど戦力になるということだ。


 先の魔王との戦でも魔法使いたちが大いに活躍しており、勝利を得ている。


 いまの「史上最弱」のレベルは最下位のレベル1。結成して2ヶ月以上経つのだが、レベル上げできるような依頼をしていないためにさほど上がっていないのだ。


 魔法使いが入るとそれだけでレベルが3になるはずで、それだけ依頼量もふえていくはずだ。



「うーん。やっぱり、魔法使いとか必要だよね」


 ドラゴンのリデルがいう。


「そうだよなあ。なあ、このなかで実は魔法使いだというやついる?」


 キイはパーティーのメンバーに尋ねた。


「わたしは少し魔法使えるけど魔法使いになれるほどじゃないわ」


 アイシアが答える。


「僕はただの読書家だもんなあ」


 ショセイは本をめくる。


「でも、それ魔法の本だよなあ。ショセイは魔法使いにならないのか?」


「無理だよ。魔力ないし」


 ショセイが困惑する。


「それでそこのムメイジンはないわね」


 さっきから美味しそうにご飯を頬張っているムメイジンを指差しながらアイシアはすぐさま否定する。


 ムメイジンは異世界人だ。ただ剣術の心得があるだけで、どうみても魔力とは無縁のようだ。


「そういう、キイはどうなのよ。魔法使いにならないの?」


「おれ? おれはただの鍵師だよ。魔力は少しあるけど」


「そっか。魔法使い。魔法使いの知りあいとかいないのかなあ」


 ショセイがつぶやくと、だれもが頭を抱え込む。


 いない。


 知人で魔法使いになった人もいない。


「なあなあ、ちょっと質問!」


 さっきまで食事をしてきたムメイジンが手をあげながら口を開いた。


 三人と一匹はムメイジンをみる。、


「そういえば、職業って一つしかもてないの?」


「はあ?」


「だから、ひとつしかもてないのかと聞いてんの。鍵師は鍵師じゃなきゃいけないのか? マッパーはマッパーじゃないとだめなのか?べつに掛け持ちしてもいいんじゃないかってはなし」


 それをきいて、キイたちは思わずお互いをみた。


「それは思い付かなかったわね」


「そうだね。職業が一つってのが当たり前すぎて気付かなかった」


 そういいながら、ショセイは別の本を開く。それは冒険者に関する規定などが書かれた本だ。


「たしかに職業が一つしか登録できないとは書かれていないね」


「そういうこと。だからさあ。ここはだれかが魔法使いになればよくねえ。ほら、二刀流ってやつ!!」


「二刀流? おっなんかかっこいい響き!!」


 キイはいつになく目を輝かせた。


「だろ? かっこいいだろ? 」


「かっこいい! 俺、なろうかなあ。魔法使い。そしたら、鍵師と二刀流になるじゃん! 」


「うん! 僕は魔力ないから無理だけど応援している」


 キイ、ショセイ、ムメイジンの三人の少年たちは二刀流という言葉に異様な盛り上がりを見せた。


 アイシアとリデルはそれを目を細目ながら傍観する。



「ねえ。リデル……」


「なに? アイシア」


「キイが魔法使いになったら、“史上最弱”ってパーティー名かえられるかしら?」


「たぶん無理」


 リデルはあっさりといった。


「どうして?」


「だって、キイは勉強嫌いだもん。魔法学校なんて三日ももたないよ」


「そっか……」


 アイシアは納得してしまった。


 しばらく二刀流という響きに盛り上がっていた彼らだったのだが、結局のところ………。



「でも、魔法学校行かないといけないんだよなあ。もう面倒だから魔法使いスカウトしようぜ」


 というキイの一言で幕引きになった。


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