ドラゴンを連れた鍵師は魔法使いを仲間にする1
魔法使いがパーティーにいるだけでホンの少しなりともレベルがあがる。レベルがあがるということはいままでよりも報酬が高い依頼を受けることが可能である。
キイたちの中から魔法使いになるという手もあったのだが、それには魔法力がある程度あることと魔法学校を卒業していることが条件であった。
このパーティーメンバーで魔法の要素があるのはキイだけ。
もちろん、リデルも魔法力があるにはあるが、なにせドラゴンだ。ドラゴンが魔法学校に入るなんて聞いたことがない。
唯一の魔法力のあるキイはなによりも勉強嫌いである。興味あることはきちんと覚えるのだが、それ以外はまるっきしダメ。故郷の学校へ通っていたころはテストでは常に赤点だった。
何度も追試をうけており、それに関しては父親は「なんか情けないぞ。お父さん、まじで泣きそうだ」とぼやかれたことがあった。
そんなこというけど、嫌なものは嫌なのだ。
魔法学校へ行かないと魔法使いになれない。
そういうわけで、キイは魔法使いになることをあきらめて、仲間になる魔法使いを探すべくして魔法使いがよく集うという街へと訪れることにした。
その場所はシャルマン国首都ステラの隣町のマナである。マナという町になぜ魔法使いが集まるかというと、そこには魔法使いになるための魔法学校があり、繁華街には魔法道具が豊富に売られているためだ。
ゆえに自然と魔法使いたちが集まるというわけである。
マナの町でももっとも賑わっているのが、魔法道具店が立ち並ぶ繁華街マジックストリート。そこには魔法使い特有のマントを羽織っている人たちの姿が行き交っていた。
「多いなあ」
キイたちが回りを見回す。
そのほとんどが同じような魔法使いのマントを着ているのだが、なかには剣士やシーフといったスタイルのものと同行している姿もある。どうやら冒険者のパーティーの仲間と一緒の訪れているのもいるようだ。
「あれが却下よね」
アイシアのいうようにすでにパーティーを組んでいる魔法使いに声をかけるようなマネができるわけがない。
「史上最弱」なんてネーミングのパーティーの引き抜きなんて受ける魔法使いもいなければ、引き抜こうとするパーティーもいないだろう。
「それじゃあ、一人のやつ探すんだな」
キイが顎に手を添えながら周囲を見回す。
「単純に一人だめだよ。できれば、冒険者登録しているひとがいいよ」
ショセイがそう付け加えた。
「なんで?」
ムメイジンが尋ねる。
「当然だよ。冒険者登録をしているということは、相手も入りたいパーティーを探してるということだもん」
「でもさあ、どうやって探すんだ? 単独だからってパーティー組んでいないともかぎらないぞ」
「じゃあ、一人行動に片っ端から声をかけるというのはどうだ?」
「却下」
ムメイジンの案をキイはバッサリと切り捨てた。
「それなら、どうするの?」
「そんなの、決まっている!!」
アイシアの質問にキイの代わりに彼の肩の乗っていたドラゴンのリデルが飛び上がりながら答えた。
四人の視線が空を飛ぶリデルに注がれる。
「リデル。なんか名案があるのか?」
「第六感だよ」
「「「「はい?」」」
「僕の第六感はすごいんだぞ。すぐにでも魔法使い探してやるううう」
そう叫ぶなり突然リデルが飛び出した。
「おい! 待てよ。こら」
キイたちは慌ててリデルを追いかける。
「第六感って?」
走りながらアイシアがキイに尋ねると困惑したような顔をする。
「それって要するにただの勘じゃないの?」
ショセイが無表情でいう。
「違うねえ」
ムメイジンがなぜか楽しそうにいうとショセイがむっとして睨み付けた。
「第六感というのはひらめきだあああ。びびっとくることなんだよおお。ふふふ。絶対おもしれえやつ見つけるに決まっている。俺みたいに才能あふれたやつをさ」
「ねえ。キイ。どう思う?」
アイシアは助けを求めるかような視線をキイに向ける。
「才能はうんぬんはともかく、それしかない気がする」
「いいの? それで?」
「仕方ないだろう。あいつはドラゴンだぞ。きっと第六感もすぐれているはずだ」
キイは自分の言い聞かせるようにいいながら、リデルのあとを追いかける。
やがて、リデルが羽根をパタパタさせながら一定の場所で止まった。
「ふええええ」
するとリデルの飛んでいる位置のすぐしたから少女の間の抜けたような声が聞こえてきた。
なんだろうとみると、そこには魔法使いのマントを来た少女がぐったりと倒れているではないか。
「あ、女の子が倒れている」
最初に駆け寄ったのはムメイジンだった。
「あの。どうしました?」
ムメイジンが腰を下ろしてぐったりと倒れている少女に話しかける。
グルグルグル
「お腹すいて死にそうですうう」
同時に少女のお腹のむしが鳴った。
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