ドラゴンを連れた鍵師は今後について模索する1
「はい。銅貨十五枚です」
クラーケンズの面白くもない漫才をみたあとにギルドへと向かったキイたちに渡された今回の報酬は銅貨十五枚程度だった。
銅貨十五枚で買えるものといえば、どうにか人数分のパンをひとつずつ買えるかどうかぐらいだ。
ムメイジンがパーティーに加わってからすでに一ヶ月がすぎている。最初は銅貨の価値なんかを訪ねたりもしていたのだが、いまでは日本円でどれくらいの価値があるのか理解している。
銅貨一枚の価値は日本円でいうなら、およそ十円ほど。
銀貨は五百円ほど
金貨は一万円ほど
そんなところだが、銀貨と金貨の価値の差が半端ないというのがムメイジンの意見である。
なぜ、そんなことがわかったかというとスマホの存在が大きい。なにせ、このスマホという道具を開発したのが、ムメイジンと同じセカイで育った人物らしかったのだ。スマホのなかにはちゃっかり「異世界転移してきた人への優しいガイドブック」なんてものがある。しかもそれは日本語。
キイたちにはまったく読めないから無視してきたものらしいが、ムメイジンは難なく読めたいた。本当に中途半端な記憶喪失だなあと我ながら思う。
それをクリックして開いてみると、またもや日本語で丁寧にこのアウルティア大陸の地図と国名、通貨の価値なんかが書かれていたのだ。もしかしたら、ムメイジンのように異世界からやってきた人間が冒険者のなかにもけっこういるのではないかと推測できる。
そういうわけで、難なく通貨の価値、その使い道を理解することができたのだ。
だから、銅貨十五枚。円価値で150円ほどでなにが買えるというのか。
パンを買えるといっても、いまのパーティーの人数はドラゴンのリデルをいれて五人。
一人30円のパンぐらいでその大きさは手のひらサイズほどだった。
だから、相変わらずのギリギリな生活を送っている。
「もっと、稼げるような依頼ないのか?」
キイは銅貨十五枚貰いながら受付嬢に尋ねる。
「そういわれましても、いまのあなた方のレベルではそう易々と稼げるような依頼はございませんよ」
あっさりと答える。
その態度はあまり心地よいものではない。
なぜ、いつも銅貨しかもらえないような依頼を提供されてしまうかというと、彼らのレベルの低さもあるのだが、なによりも「史上最弱」というパーティー名のせいである。
なんどか改名を申請したのだがら、改名するにはレベルが足りないとかで却下されてしまうのだ。
「なんか、ぜったいに嫌がらせとしか思えまないよ」
「そうそう、俺たちにどんな恨みがあるんだよ」
キイのすぐ後ろでリデルとムメイジンがふて腐れたようにいい、アイシアとショセイがうなずいている。
「そうだよ! 俺たちに対してだけ厳しくねえか?」
「そんなことございません。私たちはマニュアルに乗っ取ってであなた方冒険者に依頼を提供しているにすぎません」
そうやって詰め寄ってくる冒険者はキイたちだけではないらしく、キイの質問に受付嬢は狼狽えることなく淡々と答えた。
本当にそうなのか?
いったい、どんなマニュアルがそんざいするのだろうかと疑問でならない。
「たしかにそのマニュアルが完璧とはいえません」
キイの心を読み取ったかのように受付嬢は話を続けた。
「現在のシステムができて十年もたって降りませんし、スマホが実用化されたのもこの数年。実際にはまだ試行錯誤段階ではあります」
「だったら……」
「それとこれとは話は別です。とにかく、ある程度のレベルあげをしていただければなりません。せめて魔法使いでもパーティー仲間に入れたら、少しはマシになるでしょう」
「魔法使い? あっ、そうか!」
だれもが怪訝な顔をするなかでショセイだけがなにかを思い出して、もっていた本を開き始めた。
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