ドラゴンを連れた鍵師と異世界人・その二
「今度は
「異世界からきた」と自称する少年をひろったキイたちは、本人に押しきられる形でパーティーに加えることにした。
自称異世界人とは言えども、少なくともシャルマン国の人間ではないことは確かなようだ。見た目にもこのシャルマン国には見ない黒い髪と黒い瞳をしている。
「あなたは本当に異世界からきたのですか? 証明できるものはありますか?」
受け付け嬢は自称異世界人を凝視する。
「うーん、ないなあ。でも絶対に異世界に転移したんですよ。だって、この景色ってゲームの世界ですよ。RPGの世界そっくりです」
その自称異世界人どこか興奮したように言葉を並べているのだが、キイには「RPG」なんて言葉はまったく聞き覚えのない言葉だった。
「お姉さん。RPGわかりますか? ガラホとかスマホとかわかりますか?」
なぜか、偉そうに受け付け嬢に問いかける少年の姿にキイは苛立ちを覚えた。
「キイ。こいつ、仲間にするのやめない? 面倒くさそうだよ」
キイの肩に乗っていたドラゴンのリデルは耳打ちをする。
「うーん。そもそもひろったのが間違いだったなあ」
キイは両腕を組んでそういった。
「知っております。RPGもガラホもスマホもよく聞くことばです」
受けつけ嬢はあっさりといい放った。その言葉に自称異世界人はたじろぐ。
そのうしろでキイもまた目を丸くした。
「そのRPGっって言葉もよく聞く言葉なのか? 俺、初めて聞いたぞ」
「なにいっているんですか?」
「冒険者としては知っておくべき言葉ね」
キイは読書好きで知識が豊富なショセイがいうのはわかるのだが、アイシアまでも当然にようにいっていることが少々不満に思えた。
「なによ。その目。私をばかにしているの?」
「いやいや。滅相もございません。アイシア嬢」
アイシアは本当かしらと疑いの目を向ける。
キイは頭を撫でながら苦笑した。
「RPGというのは、冒険者の依頼内容にある称号のひとつですよ。簡単にいえば、妖魔なんかが遭遇する確率の高いダンジョンなんかの攻略といった依頼のことを指します。ガラケーはガイドランスケーブルのことですね」
ショセイの説明でキイはピンときた。
「それ知ってる。たしかアメシスト王国が開発した通信手段のことだよな」
「そうです。RPGの名称もアメシスト王国が発祥ですよ」
「たしか、スマホもだよな?」
キイはポケットのいれていたスマホと呼ばれるカードを取り出すと、それを異世界からきた少年にかざしてみる。
すると、異世界からきた少年のレベルが表示される。
「だけど、異世界からきたんだよ」
「だから、証明しろといっているんですよ」
その間も異世界からきた少年と受け付け嬢の言い争いが続いている。
「証明……」
異世界からきた少年はしばらく黙り混む。
やがてなにかを思い付いたらしい。
「チートだ」
「はい?」
受け付け嬢は首をかしげる。
「おれにはチート能力があるはずなんだ。この世界にないチート。チート能力。チートってのはわかる?」
「わかりますよ。ずばぬけた能力があるかもっていいたいのでしょ」
そうだよと少年はうなずいている。
「それって異世界からきた証明になるのかしら?」
「いや、ならないでしょう」
アイシアとショセイは口々にいう。
「ならないな。ぜんぜん」
キイはスマホを通して少年を見ながらいう。
「いいですよ。調べてみましょう」
受けつけ嬢はスマホよりも一回り大きなカードを少年の前にかざすと、その画面をじっとみつめた。
カードを下ろすとため息を漏らす。
「なにがチートですか。あなたはまったくその要素がありません。いたって平凡ですよ。いや、平凡以下の凡人」
「え?」
少年は顔を歪めている。
「そうなの?」
スマホをみていたキイにアイシアは問いかけた。
「チート能力はなしだったよ。見てみる?」
キイはアイシアたちにスマホを見せた。
そこには少年のスキルなどが表示されていた。
レベル・1
職種 剣士
能力値・10
ヒットポイント・0
マジックポイント10
経験値・0
スキル・なし
「チートどころか」
「「「一番最弱じゃん」」」
キイのあとに続くようにアイシアたちも少年をみながら口をそろえていった。
その言葉が聞こえのか。少年は意気消沈してしまっている。
「それとキイさんたち」
うなだれる少年をみていた受け付け嬢はキイたちを睨み付ける。
「剣士か魔法使いをつれてこいといいましたが、こんなレベルの低い人つれてきてどうすんですか? これでは話になりません。あなたたちのパーティー名の変更は無理です。『史上最弱』のままです」
「「「「ええええええええ!!!」」」」
三人と一匹が不満の声をあげたのはいうまでもない。
そのそばで「おれは最弱。最弱なのか。チートなはずなのにいいい」と自称異世界からきた少年はいじけまくっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます