ドラゴンを連れた鍵師と仮のパーティー名
パーティーのメンバーがショセイをくわえて、三人と一匹になった。
これでどうにかパーティーでの冒険ができるに違いないと意気揚々とギルドに訪れたキイたちだつたのだが、売受付嬢はあっけなく「無理ですね」といったのだ。
「ええ?なんでだよ。それなりに人数そろったのになぜ冒険できないんだよ」
「そうだ。そうだ」
キイが不満な顔をして受付嬢を睨みつけた。けれど、受付嬢きクレームに対する対策にも慣れているのか。まったく動じていない。
「あなたたちのスマホを見てください」
そう言われて、さきほどもらったばかりのスマホ画面を見る。
「あなたたちのパーティのステータスが表示されてます」
『キイ=ロックウェル
レベル・1
職種・鍵師
能力値・100
ヒットポイント・5
マジックポイント・300
経験値・5
スキル・鍵の開閉・鍵の展開・鍵の構成
アイシア=ファランギース
レベル・1
職種・マッパー
能力値・60
ヒットポイント・0
マジックポイント・100
経験値・0
スキル・感知・捜索
ショセイ=アズベルト
レベル・1
職種・読書家
能力値・78
ヒットポイント・1
マジックポイント・500
経験値・1
スキル・幻覚
ドラゴン・リデル
レベル・8
職業・ドラゴン
能力値・800
ヒットポイント・5
マジックポイント・780
経験値・5
スキル・飛翔・業火』
「おっ、リデル。おまえ、すげえなあ、レベル8だぜ」
「本当だ。本当だ」
リデルが嬉しそうにはしゃぐ。
「なにをいっていらっしゃるのですか? ドラゴンならば、すでにレベル50が当たり前ですよ」
あっけなく言い放った。
「マジで?」
リデルが思わず聞き返した。
「マジです」
案内嬢が答える。
「えええ。でもおお。ぼくは生まれてから三か月しかたっていないしい」
「いいえ。生まれたときには、その半分のレベルを持つものが当たり前です。要するにあなたはドラゴンのに中でも最弱ということです」
その言葉がリデルの頭に重石がゴンゴンと積み上げられそのままよろめく。
「リデルうううう」
床に転びそうになったところをアイシアはどうにか防いだ。
「ははははは。最弱だってえええ。リデル。最弱うううう」
キイは大笑いする。
「キイさん。人のこと言えませんよ。ヒットポイントと経験値が同じですよね。それは、つまりレベル1の魔物しか倒せなかったということですよね。しかも、ドラゴンと一緒にいながらですよ」
「えっと……。いやあ、リデル最弱だしい。あははは」
「キイいいいい。君までいうのかああああ」
リデルが激怒する。
「ここはギルドですので私闘はやめてくださいよ。それにキイさんのスキル。どう考えても冒険者としてはあまり意味のないスキルばかりですよね」
「えっと、その。いや……。けど、ほらダンジョンなんかじゃあ役に立つだろう? 宝石箱も楽勝であくぞ」
「それでもです。敵が出たときの対処することはできないでしょう?」
「確かに」
キイはすぐに納得してしまった。
心当たりがあったようだ。
経験値5 ヒットポイント5
彼が倒した魔物は本当に子供でも倒せるような代物だった。魔物に対するスキルがないために、キイは武器屋で購入した剣とリデルの力で倒している。
キイとリデルの共同作業で魔物を倒したということで一体につき、それぞれに1ポイントずつき、五体倒したということで5ポイントになったというわけだ。
「キイって、もう冒険してたの? パーティー組んでないのに?」
アイシアは疑問を投げかけた。
「うーん。一応単独でも可だからなあ。レベルの低い魔物退治ぐらいならば、初心者でもできるから一応そっちで稼いでいたんだよ」
「そうですよ。でも、キイさん。あなたは冒険者になってに2か月もたつのにそのレベルはどうかと思いますよ」
「だから、今回からパーティーを組むことにしたんだよ」
キイがそう叫ぶ。
「しかしですねえ。あなた選んだメンバーがこれでは話になりませんよ。みなさん、まったくというほど冒険者には向いてないスキルと職業ばかりです。これでは、依頼を出すこともできません。もしも、冒険したいならば、冒険者にふさわしい剣士や魔法使いを仲間に加えてください」
「でも、なかなか見つからないんですよ。はははは」
その言葉に受付嬢はため息を漏らす。
「見つけてください。いいですか、剣士が魔法使いがみつかるまではパーティ登録は控えさせていただきます」
「えええ。そう言わずに……。お願いします」
「そうです。絶対に見つけますので、登録だけはさせてください」
キイに続いてアイシアやショセイも懇願する。
その必死さをみていた受付嬢は再びため息を漏らした。
「わかりました。一応登録しておきます。ただし、パーティ名はこちらで仮でつけさせていだたきます」
「え?なんで?」
「こっちで決めていいんじゃなかったのかよ」
キイもアイシアも口々に聞き返す。
「一応です。ちゃんとしたメンバーが揃えたら名前を変えてかまいません」
キイたちはお互いに顔を見合わせた。
おそらくこの受付嬢は決してひかないだろう。
仕方がない。
剣士か魔法使いを見つけるまでだ。
「わかった。それで? 俺たちのパーティ名は?」
受付嬢はにっこりと微笑む。
「はい。『史上最弱』でお願いします♡」
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