俺は鍵師をしている父に祭りの祭司を勧めた
「今回の当番は、ロックウェルさんでお願いします」
ある日、突然店に町内長のダニエルがやってきた。
「うちですか?困りますよ。仕事が忙しいんです」
「仕事?そんなものは後回しにしてくれませんか?四年に一度のお祭りですよ。この町の重要イベント。王家の方々もくるんですよ」
「それなら、なおさらですよ。一介の鍵師に務まるとは思いません。どうかお引き取りを」
「そういわずに、ロックウェルさん。お願いしますよ」
ダニエルは困惑する。
どうやら何件か回ったけれど、すべて断られてしまったらしい。
「そういわれましても」
ロックウェルは自分の後頭部を撫でながら、困惑する。
「いいじゃん。父さん。やりなよ」
すると、店の中にいたはずの息子が姿を現した。
「キイ。簡単にいうな。王家もくるんだぞ。そこでへまでもしたら大変なことになる」
「でも、うまくいったら、仕事増えるかもしれないじゃん。どうせ、火の車なんでしょ」
「おまえ、どこからそんな言葉を」
「みんないってるよ。鍵師なんて流行らないってさ。こんなに平和な町で鍵つける人いないってさ。どうせなら、王家に見初められて、王都へ行くツテ、作っちゃいなよ」
「おい。本気で言っているのか?」
「うん。本気だよ。そうしたら、出ていった母さんも戻ってくるかもしれないじゃん」
息子のその言葉にロックウェルは言葉を詰まらせる。
そして、まだ七歳の息子の頭を拳で殴る。
「いたーい」
息子は涙目になる。
「ばかいうな。ガキの分際で……」
「だってえ」
息子はむっとする。
「それはおれは見たいよ。父さんがみんなの前で舞う姿が見たい。鍵師のすばらしさも知ってほしいよ」
「……」
ロックウェルは考え込んだ。
「ねえ。そうしよう。」
息子が目を輝かせている。
ロックウェルはため息を漏らした。
そして、ダニエルを見る。
「わかった。やってみるよ。四年に一度の祭りの祭司。務めるよ」
ダニエルは目を輝かせた。
「ありがとうございます。本当に……」
ダニエルはロックウェルの手を強く握り思いっきりふった。
あまりに振る者だから、ちぎれるのではないかと思った。
「痛い。痛いです。町長」
「あっ、すまない」
町長は手を放すと、息子を見る。
「ありがとう。キイくん」
「へへへっ」
息子は頬を赤くして無邪気に笑った。
かくして、
ロックウェルは四年に一度開かれる
祭りの祭司を務めることになった。
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