ドラゴン連れた鍵師はスマホを手にしました
アイシアは鍵師と自称するキイ=ロックウェルとその連れのドラゴン、リドルとパーティーを組むことになった。
そこでもう一度ギルドの受付に申請を出す。
「はい、かしこまりました。では、これをお受け取りください」
そう言いながらキイたちにカードを一枚ずつ渡した。
その画面には数字と文字が羅列している。
「これはなんですか?」
アイシアが尋ねる。
「これは“
聞きなれない言葉にアイシアたちは首をかしげる。
「これは最近導入されたステータスシステムで使用するアイテムです。ステータスシステムはご存じですか?」
アイシアは首を横に降る。
「おれは知ってるぜ。たしか数年前にアメシスト王国で導入が始まったシステムだよな」
キイは受け取ったカードを見ながらいった。
アメシスト王国といえば、このシャルマン王国と同盟関係にある国でアウルティア大陸のなかで随一の大国でもある。
しかも、魔王を倒したという英雄が暮らしている国だ。
そこでステータスシステムと呼ばれる冒険者たちが自分の力量を数字化したシステムが生まれた。田舎育ちのアイシアには初耳のことだったが、どうやらキイはそれなりに情報通らしい。
「はい、そうです。ステータスシステムとはあなた方のような冒険者が安全に冒険できるようにするものです。自らの力量や相手の力量を数字化することで、自らのモチベーションを高める効果があります」
案内人の女性が明るい口調で説明していく。
「そして、あなたさまたちのステータスを確認するアイテムとして作られたのがいまお渡しした“スマホ”というものです。画面を触れてみてください」
「どっちが画面?」
キイがカードを裏表と何度も返しながら尋ねる。
「ギルドの紋章がついていない真っ黒になっているほうが画面です」
そう言われるままに、真っ黒なほうを指で触れた瞬間にピロロという音とともに、真っ黒だった画面が、裏側と同じギルドのマークが写し出される。
その画面がすぐに代わり、「パーティー152」という言葉が刻まれていた。
「これがあなたさまの仮のパーティー名です。その名前のとなりにペンのような絵がありますよね。そこに触れてください」
言われるままに触れると、また画面がかわり、
“名前を設定してください”の文字が浮かぶ。
その下は横線が引かれている。
「横線に触れてください。そしたら、文字が出ます。それで入力してください」
とりあえず、触れてみる。
すると、画面の下半分にシャルマン国語の文字が並ぶ。
「一文字ずつ触れていけばいいのか」
キイが尋ねると受付の女性がうなずく。
キイは早速文字をうち始める。
アイシアはそれを覗きこむ。
パーティー名“キイリドルアイシア”
「単純すぎない?」
「そうだ。そうだ。ぼくが二番目なのが納得いかない。どうせなら“リドルアイシアキイ”だ」
アイシアに続くようにリドルが喚き散らした。
「おれが最後か!」
「レディファーストだ! おまえは結でいいんだよ」
「なんだとお」
キイとリドルがけんかをはじめようとする。
「まあまあ。パーティー名はゆっくり考えましょうよ」
アイシアが二人をなだめる。
「それよりも」
アイシアはふいに抱いた疑問を受付に投げ掛けた。
「“スマホ”ってどういう意味ですか?」
「私たちもよくはわかりませんが、ステータスシステムを立案されたかの有名な英雄のスカイ=フライハイトが持っていたアイテムの名前をらしいのです」
「スカイ=フライハイト?」
その名には聞き覚えがある。
十数年前にアメシスト王国の王子と魔王を倒したという人物だ。
「はい。噂ではアウルティア大陸ではない国で育ったそうで、そこでは“スマホ”と呼ばれるアイテムを皆が使用していたそうです。それをモデルにして作ったものがこのアイテムです。だから、そのまま“スマホ”というネーミングがつけられました」
そういうことだったのかと納得する。
「アイシア。とりあえず、おれたちの名前は登録したぞ」
アイシアが受付と話している間に、キイはある程度の作業を終わらせていたようだ。
「おれとこいつのデータは大体入力したから、あとはおまえな」
「うん」
アイシアは渡された“スマホ”に早速自分の情報を入力した。
しばらくすると、
名前に下にいくつかの言葉と数字が並ぶ。
レベルは1
アイシアの魔法力は5
経験値0
などなどが書かれていた。
あとはパーティー名だ。
「どうする?」
アイシアはキイたちを見る。
キイもリドルも頭を抱えた。
突然のことでアイシアも思い付かない。
「パーティー名は急がなくてもいいですよ。もう少し仲間を増やしてからでもおそくありません」
受付がそういった。
「仲間?」
これだけではダメなのかといわんばかりにキイは受付を見る。
「だめではありません。ただ、鍵師とマッパー、まだ小さなドラゴンでは心もとないと思うのですが……。せめて、剣士か魔法使いを仲間にいれたほうがよろしいかと思います」
もっともな意見だとアイシアたちは思った。
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