第16話

次の日の放課後,祐介がまっしぐらに海岸へと向かった。


着いてみると,綾乃の母親がすぐに気づき,砂浜の洞窟の中から頭を覗かせ,合図をしてくれた。

「起きているよ。意識は,戻っているよ。」


祐介が洞窟の中へ入ると,綾乃が笑顔で迎えてくれた。


「心配をかけてごめんね。助けてくれたことを母から聞いたよ…本当に,ありがとう。」

綾乃が頭を下げて言った。


綾乃は,意識は戻っていたが,顔色がまだ悪く,体はしんどそうだった。


綾乃の母親も,何故か人間の姿のままで,綾乃の手当てをしていた。


「あの…どうですか?具合は?」

祐介が人魚に尋ねた。


「もう危なくないよ。ただ,薬をたくさん飲んでいるから,まだ海には入れないし,体力が戻るのに,時間はかかる。」


「どうして,水に入れないですか?その方が早く治るんじゃないですか?」


「薬は,体が変わるのを防げないけど,邪魔するから,今水に入ったら,とても苦しいと思う。そして,今の綾乃には,その痛みに耐える体力はない。」


綾乃は,二人の会話を聞いていて,また笑顔になった。

「なんか,仲良いね。」


「え?」

綾乃の母親も,祐介も,とぼけてみせた。

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