第11話
次の日,綾乃は,学校に来なかった。祐介は,とても心配になり,綾乃の父親のところを訪ねてみた。
「ちょっとしんどくて,休んでいるだけだよ。よかったら,どうぞ。」
綾乃の父親が祐介を歓迎し,綾乃の休んでいる部屋まで案内した。
綾乃は,横になっていたが,祐介を見るなり,飛び起きた。
「びっくりした!なんで!?」
「今日,来ていなかったから,心配で…。」
「大丈夫だよ。」
綾乃は,口では,大丈夫だと言ったが,どう見ても顔色が悪かった。
「じゃ、なんで学校を休んだの?」
綾乃は,声を低くして,話し始めた。
「昨日から,薬を注射で打ってもらっているけど,やっぱりしんどくて…今は治ったけど,今朝,起き上がれなくなっていた。」
「え!?それって,大丈夫!?体に合わないってことじゃない?」
「合わないに決まっている。体を変えるための薬だから。」
「そこまでして,人間になりたい理由は,何?」
綾乃は,すぐに答えられなかった。
「僕は,このままの綾乃でいいと思うけど…。」
「…私は,今,魔法を使って,無理やり体を人間の体に見せかけているだけだ。本当は,もうこの体じゃない。歩けないし,走れないし,光を浴びることも滅多にないし…。」
「でも,速く泳げるでしょう?」
「泳ぎたくないの。」
祐介は,知らないうちに,また綾乃の胸を見てしまっていた。
「どうした?」
綾乃は,祐介の視線が気になり,訊いた。
「…胸は,大きくなったね。」
祐介が正直に言ってしまった。
「それも,ハーフだから,海の中の方が発育がいいみたい。海斗も,筋肉ムキムキになっているよ…でも,それも,海に支配されているようで,嫌だ…邪魔くさいし。」
綾乃は,自分の体を見つめて,嘆いた。
「昨日打った注射は?もう切れた?」
「うん,切れたから,今楽になった。この後,また打つけど。」
「ダメだ!危ない!」
「続けて打たないと,効果はない。」
「無理したらダメだよ!し,死んだら,どうする!?」
「一生,あの生き物として過ごすより,死んだ方がマシだ。人間になれないなら,死んでも構わない。」
「でも…!」
「私は,もう決めたの。どんなにしんどくても,続けるって。人間になるまで。」
「大体,続けてもなれるかどうかわからないでしょう!?」
「うん,わからないよ。賭けだ。でも,私には,もう失うものはないから。」
「あるよ!何を言っているの!?沢山あるよ!」
「あなただって,私の体を見たら,逃げるよ!海斗が途中まで変わっているのを見て,びびっていたぐらいだから…それの百倍ぐらい気持ち悪いよ!」
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