第10話
綾乃が次僕の前に現れたのは,その二ヶ月後のことだった。
高校の廊下を歩いていると,遠くからにこっと笑いながら,僕に手を振っている人がぼんやりと見えた。近づくと,視界がはっきりして来て,驚きのあまり声が出てしまった。綾乃だった。
綾乃だったが,前とは違っていた。一言で言えば,大人っぽくなっていた。顔は,とても綺麗になっていて,どことなく異世界の色を放っていた。雰囲気も,同様に,人間とは,どこか違うものになっていた。
しかし,何より,驚いたのは,綾乃の胸だった。前は,膨らんでいるのか,膨らんでいないのか,よくわからないぐらいの小さな胸だったのに,今は,立派な胸になっていた。綾乃の胸を見ると,祐介は,すぐに触りたいという衝動に襲われたが,抑えた。
「綾乃!?どうやって!?」
祐介は,綾乃のデカくなった胸から無理やり注意を逸らし,訊いた。
「秘密。」
綾乃が微笑みながら,言った。
詳しいことは話してくれなかったが,人間に戻る方法を見つけたらしい。母親とは,陸に戻ることを反対されて、大喧嘩して,ギクシャクしていることや,今は,父親と一緒に暮らしていることなど,説明してくれた。
「でも,このままでは,フラフラしているようで,らちがあかないから,父の知り合いに調べてもらっているの。」
綾乃が言った。
「何を?」
「本当の人間になる方法を。」
「どういうこと?」
「父には,科学者の知り合いがいてね。私の血を調べてくれているの。もしかして,私を人間にする薬が作れるかもしれないって父も期待している。」
「実験台になっているってこと!?」
「まあ,悪く言えば,そうだね…。」
「危ないじゃない,それ!?」
綾乃の話をとても怖いと思った。
「母もそう言って,私を止めようとしたけど,他に道はない。」
「何をされるかわからないよ!やめといたら?」
「私がお願いしたの!無理やりやらされているわけじゃないし…あなたには,関係ないでしょう!」
「関係なくないよ。」
「なんで?」
「…綾乃に何かがあったら,嫌だから…。」
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