第26話

 ルークスは部屋で戦後報告書をまとめていた。そこに


「ルークス様、武術大会の案内状が届いてますが」


「グレバトス、出ないぞ」


「なぜです?」


「なぜですって、領主になったばかりで政治と対外的な防御を固めなければならない時に怪我をするわけにはいかないぞ」


「それもそうですな」


「そもそも領主と司令官の仕事で時間がないし、怪我をするわけにはいかないから無傷で終わらない可能性のある試合は全部降参することになる。つまり相手を圧倒するか降参するかの選択になるしかない……そんな試合なら出る意味はないだろ。一応アルガス達がどうなるかぐらいは気になるが、まぁ後で結果を聞けばいいだろう……ああ、でも見物はいいかもしれないな、もし優秀な人材がいればローラント地方にスカウトしても……いや、それも難しいか誰の目にも明らかなほどの人材なら先に国王直属になるか。となれば私がスカウトできるのは過少評価されている人材か。さすがに難しいな要は掘り出し物を探せということだ……グレバトス、スカウトしにくいか?」


「……ルークス様、私は執事ですので本来なら家のことが本分です。助言ぐらいならともかく、軍に必要な人材のスカウトは越権行為だと考えます」


「……なるほど」


 言われてみれば最もである。グレバトスは軍の人物ではないのに軍のスカウトをするのはおかしな話だ。


「まだ問題があるな、ラファ嬢には近づくのは禁止されているからな、ラファが来ると退散せざるをえない」


 自分から近づくのは禁止されているがラファ嬢が後から来たらどうなるんだ?……まぁ何もしなければラファ嬢は自分の近くには来ないだろう。


「暇だったら行く?……それもないか、そもそも領主と司令官を兼任している時点で行ってる時間は……」


 まぁ今回は見送るか……特に利益もなさそうだし。




 ……と思っていたんだが別なところで利益になった。


「いやぁ、まさかあんなに売れるとは」


「ルビン会長、何が売れたんです?」


「ルークス様、リバーシがですね売れたんですよ。武術大会の会場で」


「……はい?」


 武術大会である以上見物客は当然いる。だからといって見物客が全員武術に詳しいかというと、そんなことはない。日本でだってプロ野球の観戦する人間の大半は一般人だ。つまり一般人相手にリバーシは売れたらしい。まぁ特許の収入は利益になるからいいか。


「後は国軍の方でも正式に鐙の受注を受けたので生産を拡大します」


「それは良い報告だ」


「リバーシは在庫も大量にあるのでブームに乗って売りさばきましょう」


在庫は大量にあるっていうか……大量に作ったのだけど。まぁブームに乗って売りさばくのは賛成だ。リバーシは一応特許登録されているとはいえこの国の基準で完璧に守られるとは考えにくい。真似するにしても時間がかかるはず、コピー商品が出回る前に大量に世間に浸透すれば真似する意味はなくなる。それにコピーはこの国だけの問題じゃない。敵対しているゴルゴダルダ国の人間が我々に対して特許料を払うかといったら、答えはノーだろう。

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